花見

季節は春。花見の会場である咲彩の住む石原神社の桜の木の下では咲彩、水萌、苺瑠、奈鶴が花見の準備が進めていた。
姫「今日は花見。短い春という季節を実感するのに最適なイベントなのだ。」
水「そうだよな。春って案外短いもんな。」
奈「夏が長くなっている影響でほぼないものになっている秋よりはましだと思いますけどね。」
咲「テーブル持ってきたよ。でもいいの?お花見なんだからシートひいてやった方がよくない?」
水「いや、いちいち靴を脱いだりするのも大変だからこれでいいんだよ。」
奈「咲彩さんの家に大き目のアウトドア用テーブルあってよかったですわね。」
咲「うん・・・だけど他のもの用意しなくてもいいって言われたんだけど大丈夫かな?」
水「平気だろ。頼んだもんならあいつらが持ってきてくれるさ。」
そんな会話をしていると和琴がやってきた。背中にはコンロのようなものを背負っている。
和「やっと着いた・・・これ背負ってくるのは大変だったわ。」
清「お疲れ様でした。」
和「それにしても花見なのになんでバーベキューするのよ?一応昔使っていたっていうグリル持ってきたけど・・・」
和琴が背負っていたのはバーベキューコンロだったようである。
水「食べられるもんの種類は多いほうがいいだろ。」
和「それもそうね。生泉たちと別できちゃったけど、あいつら遅いわね・・・」
和琴がそんな話しをしていると、愛麗と環輝がやってきた。愛麗は何やら重箱を抱えている。
麗「一応咲彩に頼まれたもん作ってきたけど・・・これでいいのよね?」
愛麗が持ってる重箱を開けると中には大量のおにぎりが詰められていた。
麗「一段目が昆布の佃煮で二段目がツナマヨで三段目がシャケね。四段目にはサラダ、五段目には卵焼きを入れておいたからね。」
咲「ありがとうらっちゃん。助かったよ。」
環「アンも少し手伝ったし。」
麗「アンは具材混ぜただけでしょ。ってかアンと水萌がたくさん食べるっていうからこれだけ作ったんだから残さないでよね!」
水「ああ、もちろん分かってるよ。アタシのためにありがとな。」
奈「愛麗さん、食材費はあとでお支払いいたしますわね。」
麗「了解。」
環「金払ってもらうの?」
麗「さすがにこれだけの量だとあたしの家にある食材じゃ賄いきれないのよ。自営で農家してるわけでもないしね。」
次に凛世とエレナと嘉月が着いた。愛麗たちとは別行動をしていたようである。
凛「愛麗たち先に着いてたんですね。」
凛世がペットボトルが大量に入った袋を持ちながら言った。
麗「まぁね・・・ごめん買い物頼んじゃって。」
エ「心配しなくても大丈夫・・・飲み物はたくさん買ってきたからしばらく持つはず・・・あとコーヒー飲みたい人様にコーヒーメーカーをおじい様から借りてきた。」
凛「それに・・・じゃんけんで負けたんだから仕方ないですよ。」
咲「じゃんけん?それで何を決めたの?」
嘉「愛麗ちゃんがお弁当の入った重箱持って移動するの大変やっていうから誰か一人ついていくことになったんやねん。それでウチと凛世ちゃんとレナちゃんと環輝ちゃんで誰が行くかジャンケンして決めたんや。」
環「それでアンが勝ったんだし。負けた3人は咲彩に頼まれてた飲み物の買い出しに行くってことにしてね。」
姫「愛麗君人気者だな!」
そんな会話をしている最中、残りのメンバー陽姫と柚歌とラニーがようやく到着した。
柚「遅れちゃってごめん・・・何やってるの?」
陽「お花見もう始まっちゃった~?」
ア「遅れて申し訳ないデス。」
咲「まだ始まってないよ。少しトラブルがあってね・・・」
柚「そうなんだ・・・あ、約束通り使い捨ての食器買ってきたよ。」
陽「私の家に近くに100円ショップが無くて・・・少し時間かかっちゃったよ~・・・」
陽姫はそういうとプラスチックフォークや割り箸、紙コップなどを取り出す。
柚「まぁ電車で100均まで行ったもんね・・・」
ア「陽姫サンは不便なところ住んでますネ・・・」
陽「でももうすぐ騎ノ風駅の近くにあるビルに引っ越すんだよぉ。」
咲「これで全員そろったみたいだね。ことちゃん、コンロの準備できた?」
和「今ちょうど温まったわ。野菜とか焼いちゃっていい?」
咲「もちろん。それじゃあ、今からお花見パーティを正式に始めます!」
全員が集合し、咲彩の一言でお花見パーティーが始まった。
桜を見たり、料理に舌鼓をうったり・・・咲彩たちはそれぞれお花見パーティーを楽しんだ。

陽「凄~い!これ愛麗ちゃんが全部作ったの!?」
麗「あんまり大きい声出すな。そうよあたしが作ったのよ。」
凛「好きなだけ食べてくださいね。愛麗のお料理は絶品ですから。」
麗「ありがと凛世。」
凛「西園寺さん、飲み物は何にしますか?」
陽「えっと・・・炭酸系の飲み物ってある?」
凛「黒いお水と緑のお水、どっちにしますか?」
麗「普通にコーラとメロンソーダっていえばいいでしょうが。」
陽「それじゃあ、コーラをお願いしようかなあ。」
凛「はい、分かりました。どうぞ。」
凛世はコーラを注いだ紙コップを陽姫に渡す。
麗「なんかあんたたちのやり取り見てると癒されるわ。」

姫「咲彩君、この桜の樹齢ってどれぐらいなのだ?」
咲「そうね、私が生まれる前からあったような気がするけど・・・?」
奈「あら、この桜の木って咲彩さんが生まれた日に咲彩さんのおじい様が植えたものではありませんでしたっけ?」
咲「そういえばおじいちゃんにそんな話を聞いたような・・・それとそっちの梅は颯ちゃんの生まれた日に植えたって聞いたような気もするよ。」
姫「颯?だれなのだそれ?」
水「咲彩の妹だよ。苺瑠は合ったことなかったっけな。」
姫「今日はいないのか?」
咲「私たちがお花見するって言ったら気を使って遊びに行っちゃったんだ。」
姫「そうなのか・・・咲彩君の妹、見てみたいぞ。」
水「まあいつか会えるさ・・・それとこの桜はアタシたちと同い年ってことか。なんか不思議だよな。アタシらなんかより身長が高いってのに。」
姫「木だから我らよりも身長が高くてもおかしくないのだ。」
水「それもそうだよな。だが16年でここまで大きくなるなんてすごいな。」

和「はぁはぁ・・・一人で鉄板焼きするの大変だわ・・・」
和琴はせわしなく持ってきた野菜を刻んで焼き続ける。
柚「そういえばお肉ないの?ボクお肉食べたいんだけど。」
エ「あ、お肉・・・ごめん無理だった。」
嘉「・・・肉は予算の都合で用意できなかったんや。」
柚「そうなんだ・・・少し残念。」
ア「そんなこともあろうかとワタシがシャシリク作ってきたデス!これも焼いて食べるデス!」
柚「美味しそうな肉だね。ロシアの伝統料理か何か?」
ア「そうデス。シャシリクは日本のように肉を普通に焼くではなく・・・」
和「あんたたち喋ってないで手伝いなさいよ~!」

思い思いに花見を楽しむメンバーたち。しかしそこに魔の手がやってくるなどと思いもしなかった・・・
山「はぁ~・・・なんでオレ女子高クビになっちまったんだよ俺・・・あいつら許さねえ・・・」
彼は山島信玄。咲彩たち水晶学園1-1のクラスの元担任である。
山「あいつらのせいで俺の人生めちゃくちゃだ!全員叩き潰してやりてえ!」
相当イラついているのかビールの瓶を1本まるごと持って飲んでいるようだ。
山「ここは・・・石原神社?こんな寂れた神社が騎ノ風にもあるんだな・・・少しよってお参りしていくか。」
山島先生は神社の境内に足を踏み入れて行った。

陽「愛麗ちゃんのお料理美味しい・・・あれ?誰か来たよ?」
奈「こんな時間に誰でしょうか?」
山「くそー・・・俺に新しい彼女ができますように!!!」
麗「あれって前の担任教師じゃ・・・」
環「あら、ほんとだわ。山島先生ね。」
山島先生は咲彩たちの存在に気付いたのか、怒り狂ってこちらの方に突進していく。
山「あ!お前ら何自分たちだけたのしそうに花見やってんだよおおおおお!!!俺も入れろおおおお!」
ビール瓶を振り回しながら咲彩たちの方に向かってくる山島先生。
ちなみに咲彩たち14人は全員酒が苦手である。
柚「やば・・・山島先生ビール飲んでるみたい・・・」
ア「危ないデス!せっかく皆さんとも仲良くなれたのに・・・ここで殺されるんデスカ!?」
姫「むぅ・・・あれでは花見会場にいる酔っ払い男と変わらないのだ・・・」
奈「そんなこと言ってる場合じゃないですわ!早く止めないとパーティが滅茶苦茶になってしまいますわ。」
麗「男嫌あああああ!!!」
凛「生泉さん落ち着いて・・・鷲宮さん何か対抗できるメカ持ってないんですか?」
エ「今日は何も持ってきてないごめん・・・」
水「仕方ないな・・・少し気絶しててもらうか。」
水萌が酔っ払い状態の山島先生の腹を蹴って気絶させ、近くにいた環輝がビール瓶を奪い取る。
水「やったか!?」
しかし、山島先生は1分もしないうちに立ち上がった。
環「やっぱり・・・ビール瓶はアンが奪ったからいいけど、あいつ本体にはあまりダメージないみたい。」
水「ちっ・・・蹴りが甘かったか・・・」
山「ちくしょおおおおお!俺は本当は中学教師になるはずだったのになんで高校教師なんだよおおおお!」
柚「ボクたちに向かってそんなこと言われても・・・」
和「愚問ね。」
山「それに俺は大人のお姉さんが好きなんだああああ!!!お前らなんか眼中にないってのによおおお!!!」
山島先生は酒に酔った勢いに任せて花見の料理を置いてあるテーブルを蹴り飛ばした。
その衝撃で和琴の焼いていた野菜と愛麗の作ったお弁当の一部が地面にぶちまけられた。
和「ちょ・・・まったく、暴れるなら他所に行きなさいっての・・・」
山「これでお花見パーティーは台無しだな!ざまあみろ!!!」
麗「人の作った料理駄目にしやがってお前こそふざけるなああああああああ!!!
あんたの女性趣味なんか知るか!!!酔っ払い男は帰れ!!!パーティ台無しにしやがって!!!一発殴ってやる!!!」
凛「ああ・・・生泉さんがとんでもないぐらい怒ってます・・・」
嘉「アンちゃん、なんか落ち着かせる方法あらへんの?」
環「アンじゃ無理。愛麗がこうなっちゃったら怒りが収まるのを待つしかないのよ。」
エ「凛世ちゃんは怒りを抑える方法知らないの・・・?」
凛「無理ですよ・・・愛麗の逆鱗に触れたものは絶対に助かりませんので。」
奈「水萌さんどうしましょ・・・」
水「仕方ないな。奈摘、これ使って表示されてる番号の所に電話しろ。」
水萌が奈摘に自分の携帯電話を渡した。
奈「分かりましたわ。それにしてもこの電話番号どこにつながっているのでしょうか?・・・この番号は岡崎組!?」
姫「岡崎組ってなんなのだ?」
水「アタシの母方の実家。建設会社なんだけど裏向きは結構やばい組織だよ。
警察になんか連絡したらあいつが教師首になる可能性も高いからな。アタシからの情けってやつだ。」
奈「分かりましたわ・・・あ、すいません岡崎組の方ですわよね・・・わたくし水萌さんの友人で天宮城奈摘と申します・・・」
奈摘が連絡を入れた5分後には岡崎組の団員が到着し暴れまわる山島先生を捕まえ引きずって行った。
山「ちくしょおおおお!!!また来るから覚えてやがれええええええ!!!」
団「水萌お嬢。また何かあったら何なりと私どもにお申し付けください。」
水「ああ、また頼むぜ。」
酔った山島先生は、負け惜しみを言いながら岡崎組の団員に引きずられていった。
麗「まさか元担任教師があんな奴だったとは・・・」
凛「生泉さん怒りは落ち着きましたか?」
麗「まぁね・・・あたし男が暴れてるの見るとすぐイライラしちゃってごめん。それにあたしの作った料理を滅茶苦茶にされて許せなかったの・・・」
嘉「愛麗ちゃんはなんも悪ないで。ウチやって不快やったし。」
和「山島が暴れまわったせいで、食材が3割ぐらいダメになったわね・・・」
和琴が無残に散らばった食材(焼いたけどコンロから飛び出してしまった野菜と愛麗のお弁当の一部)を見ながら言った。
水「まだ全滅したわけじゃないだろ。それに食べ物が無くても花見は続けられるぞ。」
和「それもそうね。」
陽「あ、バタバタしてて気が付かなかったけどもう夜だねえ・・・」
気づくと時間は夜になっていて、夜になって暗い空に桜の花びらが散っていた。
水「夜桜もいいもんだな。」
奈「咲彩さんはこの夜桜を毎日見ているんですわよね。羨ましいですわ。」
咲「慣れちゃうとよく分からなくなっちゃうけどね。」
エ「そういう物なのかな・・・」
凛「生泉さん綺愛麗ですね!」
麗「そうね。」
嘉「またいつかみんなで見られたらええわなあ・・・」
柚「また来年もやろうよ。そうすれば見られるじゃない。」
咲「そうね。来年もやりましょう!ここで!」
全「「「「「賛成!」」」」」
13人はまた来年も花見をすることを約束したのだった・・・