和琴があだ名をつけるなら?

ある日の放課後。愛麗、凛世、和琴、奈摘、嘉月、水萌の6人が地下書庫に集まっていた。
「それでさ生泉、明日のアタシと一緒に取っている選択授業の課題ってどんな風にやった?」
「あたしはまあ・・・興味あることについてまとめただけだけど。そういえば和琴ってなんであたしたちのこと苗字で呼ぶのよ?」
「急にその話題なわけ?そんなこと言いだしたら夜光だってそうじゃない。」
そこに6人分のお茶をもってきた凛世がこう言った。
「私はその呼び方が礼儀だと私にとっての思っているからいいんです。あ、もちろん愛麗は特別ですよ?」
「あたしのことは呼び捨てだもんね。」
「わたくしたちだけで通じるあだ名みたいなものを付けて呼び合うのも楽しそうですわよね。」
「あだ名かぁ・・・ちょっと憧れるわなぁ。」
「オレたちの中にあだ名をつけて呼び合う文化がないもんな。」
「いや、そうでもないと思う。環喜の奴はスマホにあだ名であたしらのこと登録してるみたいだし。」
「そうなんですのね。」
「前に一回見たんだけどあいあいってのがあってさ・・・確実にあたしだと思うんだけどなんか微妙な気持ちになったわ。」
「なんか猿みたいよねそれだと。」
「確かにそういう童謡はありますが、愛麗は猿よりも頭いいですから問題ないと思いますよ。」
「なあ、オレたちで全員のあだ名考えるって面白くねえかな。」
「いいじゃない水萌。それじゃ今回メインで考えるのは・・・和琴にやってもらおうかしらね。」
「なんでアタシなのよ・・・正直そういうの得意じゃないんだけど。」
「和琴ちゃんウチらのこと苗字で呼び捨てだからこういうのもたまにはええんやないの。」
「得意でなくてもやってみると案外楽しい物だったりすることもありますわよ。」
「天宮城がそういうならしゃーないわね。あだ名なんて今まで縁なかったし・・・ちょっとやってみるわ。」

その1 愛麗
「生泉か・・・いきなり難しいわね。」
「なんでよ。」
「だってあんた変なのつけると暴力振るうじゃない。」
「それ大昔のことじゃない・・・いまはそんなことしねえよ。」
「なら・・・生泉の髪の毛ふんわりしているからもふ子は?」
「もふ子って・・・何よそのセンス。」
「愛麗自身に受けは悪いみたいですけど、私は好きですね。」
「ウチは身体的特徴をあだ名にされんのはちょっとなぁ・・・」
「それで、生泉的にこれはありなの?」
「な・し!に決まってんでしょ。」
「愛麗・・・私もふ子好きですよ?愛麗のこと」
「凛世がそういうなら・・・とか言わないからね!ダメ!もふ子は禁止!」
「面倒になってきたから次行くわ。」

その2 凛世
「夜光ねえ・・・」
「なんでいやそうなんですか。」
「性格は違うとはいえ生泉と本質が似ているから変なのつけたら怒りそうだし・・・」
「それはどういう・・・まあいいです。眞武さんがどんなあだ名をつけてくださるのか楽しみですね。」
「そうねえ・・・無難にりんりんとかどう?」
「どこかで聞いたことあるような気がするぜ。」
「凛世はどう?」
「私は嫌ではないですね。眞武さん、今からりんりんって呼んでいただいてもいいですよ。」
「嫌よ嫌!だったらあんたもアタシのこと下の名前で呼びなさいよ!」
「もちろんですよ。和琴さんっ!」
「今まで苗字呼びだった夜光にストレートにそう呼ばれるとやっぱ恥ずかしいからなかったことにして・・・」
「あら、残念です・・・」

その3 奈摘
「天宮城か。これまでの中だと一番簡単そうね。」
「そうなんですのね。」
「今まで結構悩んでたのに奈摘のあだ名には自信ありそうだな。」
「天宮城は分かりやすい特徴いっぱいあるし・・・お嬢!でどうかしら。」
「わたくしが天宮城金融の令嬢であることは否定しませんわ。ですが、ありきたりすぎてなんだか残念ですわね。」
「そう・・・ならゴスロリっぽい服着てるからロリは?」
「和琴さん、それ本気で言っているのなら言わせていただきます。わたくしが何でも穏やかに許すと思ったら大間違いですわよ?」
「ちょ、怖い・・・ならつむつむは?これでいいでしょ!?」
「あら、それなら全然いいですわ。凛世さんと似ているような気もしますが。」
「(あだ名ってこんな命がけで考えなきゃいけない物だっけ・・・?)」

その4 嘉月
「次は雷久保ね。」
「お手和やらかに頼むで・・・」
「分かったわ。ならあんたオールバックだしシンプルにデコちゃんは・・・」
「和琴ちゃん何も聞いてなかったん!?」
「え?急に怒らなくても・・・」
「さっき言ったやん!ウチは身体的特徴であだ名付けられるんが好きやないねん・・・」
「・・・ごめん雷久保。それなら、かづでどうかしら?」
「ウチかげつなんやけど。もうええわ。和琴ちゃんの好きにすればええやん。」
「もうやめとくわ。悪かったわね雷久保。」

その5 水萌
「最後は織田倉ね。」
「オレにはどんなあだ名をつけてくれるんだ?」
「そうね、一人称がオレだから・・・水萌くんは?」
「・・・お前さ、それ本気で言ってるのか。だとしたら何も言えねえぜ。」
「かなりいいと思うんだけどなぁ・・・」
「オレは女だよ!だからくんはねえだろ。確かに髪の長い男に見えるって言われることもあるけどよ・・・」
「悪かったわよ!それじゃあんた名前に水の字があるから英語にしてアクアは?」
「か・・・可愛い感じで悪くねえな気に入った!次からそう呼んでくれてもいいぜ?」
「(織田倉ってほんと見た目が男らしいのにこういうことになると可愛いものを好むのわけわかんない・・・)」

「・・・和琴ってあだ名付けるセンスないわね。」
「あんたたちが勝手にやらせたんでしょ・・・好き勝手言ってばかりだし・・・」
「それはあだ名なのですから慎重になると思いますわよ。」
「あたしはもふ子は嫌かな・・・」
「りんりんは好きですよ私。」
「わたくしもつむつむならと思いましたが、凛世さんと少し似通ってますわね・・・特別にお嬢でもいいですわよ。」
「オレもアクアなら許すぜ。」
「ウチはちょっと遠慮しとくわ・・・」
「もういい!あんたたちはこれまで同様全員苗字呼びの刑なんだから!」
和琴は自分のつけたあだ名に好き勝手感想をいう愛麗たちに怒ってしまったようだ。
「ま、その方が和琴らしいわよね。」
「ですが、気が向いたらあだ名で呼んでくれてもいいですよ。」
「そのころには今日つけてもらったあだ名全部忘れてるかもしれねえけどな。」
「はー・・・アタシの苦労何だったのかしら・・・」
結局、慣れないことをした和琴に一番に疲れが出たのだった。