陽姫、愛麗と環喜にプレゼント探しを手伝ってもらう

ある平日の日。愛麗は百貨店の前である人物を待っていた。
「あいつ遅いわね。授業もう終わったはずなんだけどな・・・」
それから数分後。愛麗のところに陽姫が走ってやってきた。愛麗が待っていたのは陽姫だったようだ。
「ごめんね愛麗ちゃん。遅くなっちゃった・・・」
「遅い!・・・なんてことを言うつもりはないから別にいいわ。誰にだって遅れることはあるからね。さ、行くわよ。」
「愛麗ちゃん優しいねえ。」
「うるさい。」
愛麗は陽姫にそう言うと百貨店の中に入っていった。

「それで、今日は咲彩へのプレゼントを選びたいからあたしに一緒に選んでもらうってことだったわよね。」
「そうだよぉ。」
「なんであたしなの?水萌とか苺瑠とかもっと咲彩と親しい子たちに聞いた方がよかったんじゃない?」
「わたしさあちゃんにいつも同じようなものあげちゃってるんだ。だから愛麗ちゃんならさあちゃんと趣味嗜好がかなり違うからどんなものを渡すのかを聞いてみたくて・・・」
「ふうん・・・あたしが咲彩にあげるなら・・・これとか。」
愛麗は近くの服屋の店先にかかっていた白いライダースジャケットを手に取った。
「咲彩ってこういうかっこいいデザインの服の好きだからさ、青や黒ばかりじゃなくて白もいい感じで似合うと思うのよねー。」
「良さそう!だけど値段が・・・」
「値段?」
愛麗は陽姫に言われて値札を確認する。書かれていた値段は1万円だった。
「・・・うわあ。あたしらの手持ちじゃ1万はきついわよね。」
「大切なさあちゃんへのプレゼントでも無い袖は振れないよぉ。」
「陽姫って今日予算いくらなの?」
「うーん・・・3千円かなぁ。」
「・・・まあ、高校生ならそんなもんよね。とはいえ3千円じゃ服は買えないわ。せいぜい買えたとしても靴下とかぐらいね。服以外のもの探してみるか。」
「あ!愛麗ちゃんこれはどうかな?」
陽姫は近くの店先に置いてあった皿を手に取って言う。
「へぇ、そのお皿いいじゃない。陽姫ってセンスいいわよねこう言うの選ぶ時のさ。だけど誕生日プレゼントにお皿貰ってもね・・・せめてマグカップじゃない?」
「そうだよねぇ・・・もっと考えなきゃ。どんなのがいいかなぁ?」
「咲彩が最近欲しがっているものとか知らないの。」
「なかなか難しいんだよねぇ。さあちゃんって欲しいものあるって聞いてもいいよってすぐ言っちゃうから。」
「それは難易度高いわね・・・やっぱ色々な店を回って咲彩の欲しそうなものを選んでいくしかないか。」

その後1時間ほど2人は様々な店を回って咲彩が好みそうなものを探した。しかし、これと言ったものは見つからなかった。
「疲れちゃったぁ・・・」
「そうね・・・そこ座ろっか。」
愛麗は近くにあったベンチを指さし、陽姫と一緒に座る。
「それにしてもこんなに回っても咲彩の趣味にピンとくるものって見つからないものね。」
「さあちゃんロックなものが好きだからねえ。百貨店を探すよりもショッピングモールに行った方がよかったかなぁ?」
「ロックと言ったら楽器とか・・・?」
「楽器なんて買えないよぉ!それにさあちゃんは多少は演奏もするみたいだけど聞く方が好きみたいだから・・・」
「そうよね・・・やっぱさっきのライダースジャケットがいいかしら・・・」
「うーん、1万円だけど頑張れば出せるかもぉ・・・」
「陽姫って今スマホにいくら入ってるの?」
「うーん・・・5800円だね。銀行に行けばもうちょっとあるけど・・・」
「あと半分か・・・あたしが出せないこともないけど、それだと陽姫からのプレゼントってことにはしにくいわよね。」
「どうしよう・・・」
「おっ、愛麗に陽姫ちーっす!珍しい組み合わせじゃん。」
「あ、環喜。何しに来たの?」
「買い物ー。新しい服買ったのと取り寄せしてたパソコンの部品予約してたの引き取りに来たし。こっちのパソコンショップの方が人当りいいんだよね。用事はもう終わってるし。」
「そうなんだぁ・・・」
「陽姫元気ないけどなんか悩み事?」
「うん、さあちゃんにあげるプレゼントを探してたんだけど・・・」
「咲彩にプレゼント?」
「いつもわたし助けてもらってばかりだからお礼がしたいんだぁ。」
「なかなかいいものが見つからなくてさ、あのライダースジャケットがいいかなって思ってて。」
愛麗はそういって店先に飾ってある1万円のライダースジャケットを指さした。
「ふーん・・・あのさ、どうしてもあのライダースじゃないとだめなわけ?」
「そういうわけじゃないけどぉ、さあちゃんはロックなものが好きだからそういうの喜ぶと思って。」
「なら話は早い。ライダースにこだわらなくてもロックなものは結構あるから環喜が教えてあげるし。」
環喜はそう言うと愛麗たちを連れ、すぐ近くにあったアウトレット服屋に入った。
「え・・・この店普通な雰囲気の服屋じゃない?」
「それにアウトレットって中古じゃないのぉ?」
「違うし。アウトレットは中古じゃなくて売れ残りを安く売ってる店だから。まあまあ見てなって。このモニターマネキンに咲彩に似合いそうな服を着せてみるっしょ。」
モニターマネキンとは騎ノ風市の服屋ほぼすべてに導入されている店で売っている服を試しに着せてコーディネートできる機械である。
「これとこれとこれと・・・」
環喜はダメージパンツ、ベルト用のチェーン、レザージャケットとインナーのキャミソールを選びマネキンに着せていく。
「どうかな?これでトータル金額5400円だよ。」
「すごーい!ロックな雰囲気がするよぉ!わたしロック系は専門外だから助かったよぉ・・・」
「あんたもこういうの得意だったんだ・・・」
「一応ね。ギャル研究者を名乗る以上ファッションの知識も必要だから。」
「だったらもっと普段から真面目にしなさいよ。」
「サロペット一張羅の愛麗に言われたくないんですけどー。」
「失礼ね!毎日違うの着てるわよ!」
「こんなところで喧嘩だめ!せっかく2人ともわたしのために色々考えてくれてるんだから・・・雰囲気悪くなるのやだよ・・・」
「・・・陽姫のいうとおりね。」
「環喜もいつもの感じでつい・・・ごめん愛麗。」
「いいわよ別に。それで陽姫、この環喜がコーデした一式買うの?」
「うーん・・・買おうかな。さあちゃんに似合いそうだし。でも・・・」
「何か気に入らないことでもあった?」
「組み合わせ次第でこんなにロックな雰囲気作れるのなら、わたしが選んでみたい!環喜ちゃん、教えてもらってもいいかなぁ?」
「いいに決まってるじゃん!陽姫のセンス全開で見せちゃってよ!」
「あたしはもう必要ないかな・・・」
「そんなことないよ!愛麗ちゃんも手伝って!3人の感性と知識を合わせればきっと素敵な組み合わせが見つかるはずだから!」
「しょうがないわね・・・手伝ってあげるわよ。」
その後、3人で意見を出し合いながら咲彩に似合いそうなコーデの組み合わせを1時間近くかけて選んだのだった。

数日後。陽姫はちょうど同じ選択授業を受けていて同じ教室にいた咲彩に声をかけた。
「さあちゃん、次の授業時間って空いてる?」
「うん、次は授業入れていないから大丈夫だよ。どうしたのはるちゃん。」
「少し話したいことがあるんだぁ。」
「そうなんだ。ここだと大変だから移動しようか。」
2人は会話ができるように中庭にあるベンチに移動した。
「それで、話って何かな?」
「これあげるから良かったら着てほしいなぁって・・・」
陽姫はバッグから前に購入した服の入った袋を取り出して咲彩に渡す。
「開けてもいいかな?」
「もちろんだよぉ。」
「どれどれ、素敵な洋服・・・これ高かったでしょ?悪くて貰えないよ・・・」
袋の中には咲彩の好きそうな青のレザージャケット、白のダメージパンツ、金のベルトチェーンとファーブーツが入っていた。
「ううん貰ってよ。さあちゃんにはいつもお世話になってるからそれのお礼だよ。」
「そっか。ありがとうはるちゃん。大切に着させてもらうね。」
咲彩は笑顔で陽姫そう返したのだった。

その後、愛麗と環喜の元に陽姫からメッセージが届いた。
「あ、陽姫からメッセージが来た。『プレゼント渡せたよ、2人のおかげだよありがとう。』だってさ。」
「そりゃ環喜たちが選んだ服だから当然っしょ。」
「愛麗たち、西園寺さんと何かしていたんですか?」
「少し怪しいですわね。」
「ちょっと陽姫が咲彩にあげるプレゼント選びの手伝いしてただけよ。」
「そーそー。変なことはしてないし。」
「ならいいんですけど・・・そうだ私、愛麗に帽子を選んでほしいんです。」
「別にいいけど、あたし帽子被らないから知識ないわよ?」
「それでもいいんです。仲の良い大切な人からもらったということが大切なんですよ。」
「そっか、それなら今日の授業終わったら行こうか。」
「それならわたくしも行きますわね。服屋でちょっと見たいものがありますの。」
「環喜もいこっかな今日は自分のための買い物したいし!」
「まあいいけどさ・・・凛世、それでもいいかな?」
「いいですよ。にぎやかな方が楽しいですものね。」
「(よかった・・・)」
愛麗は心の中で最近凛世の独占欲が減りつつあることにほっとしたのだった。