夏の夜の怪談

1組メンバーは夏のある夜に咲彩の家の床の間に集まっていた。
そう、これから夏の風物詩怪談話をやるために・・・
麗「それにしても怪談話とはねぇ・・・」
凛「たまにはこういうのもいいですね。たまにはですけど。」
和「その割には夜光ったらさっきから生泉の腕に抱きついてるじゃない。」
凛「ホントのことを言うと少し怖いです・・・」
環「まったく、幽霊信じてるなんて非科学的だし。科学で証明できない物がいるわけないじゃん。」
和「あんたも結構強気に出るわね。だけど、一部賛成だわ。」
柚「アンちゃんは怖くないんだ。」
エ「・・・」
環「全然全く怖くないし。」
水「アタシもそこまで駄目じゃないかな。」
姫「我も少し怖いのだ。だが、興味はあるぞ。これが怖いもの見たさってやつなのだな。」
ア「ワタシこういうの初めてなので楽しみデス!」
嘉「ウチ帰ってええかな?」
陽「わたしも帰りたいよぉ・・・」
奈「今ここから出たら呪われますわよ?」
香・陽「ひぃ・・・」
咲「ろうそくの準備終わったわ。誰から話す?」
麗「それじゃあ、あたしから行こうかな。」

麗「この話は、あたしの部屋で起こった話なの。
ある晩、あたしがベッドに入って寝ていると、あたしの部屋の鍵が開く音が聞こえてね・・・
怖くなって体が硬直しちゃったの。まるで金縛りにでもあったみたいにね・・・
足音の主はだんだんと近づいてきてあたしの枕元にまで来たの。
それでね、あたしの耳元で何かを囁いているの。
あたしは動かない体を必死で動かして、何とか電気をつけたのよ。
そしたら・・・一緒に寝てほしかった楓が乗っかってただけだったのよね。」
柚「それ怖い話じゃないじゃん。」
凛「楓さん・・・生泉さんと一緒に寝られるなんてうらやましいです・・・」
環「突っ込むとこそこじゃないでしょ。」
陽「金縛り・・・怖いよぉ・・・」
嘉「なんで暗闇から声がきこえるんや・・・」
奈「もう怖がってますわね陽姫さんと嘉月さん。」
麗「対して怖くないと思うんだけどなぁ・・・次誰が話す?」
柚「それじゃあ、ボクが水晶学園七不思議のうちの一つについて話すよ・・・」

柚「みんなも聞いたことはあるよね?水晶学園美術室の動くビーナスの像の話・・・
ある美術部員が画材倉庫から持ってきてデッサンの練習台にしていたんだけど
その美術部員、ビーナスの像を画材倉庫に戻すのを忘れてそのまま帰ってしまったんだよ。
次の日の放課後、再びビーナスの像を描こうとした美術部員は・・・置いてあった場所からビーナスの像が無くなったことに気付いたんだ。
そして・・・部屋の隅から嘆くような声が聞こえたんだ。私をなぜ片づけてくれなかったのってね・・・
部員が声のする方を向くと・・・そこには恨めしい表情を浮かべたビーナス像が・・・
結局、そのまま部員は行方不明になったんだ。だけど、後日画材倉庫で女性の白骨死体が見つかったんだ。
もしかしたら、女生徒はビーナス像に食べられてしまったのかもしれないね・・・」
奈「ビーナス像の呪いって事ですわね。」
陽「石像怖いよぉ・・・」
嘉「骨だけ残されて死ぬなんて怖いわぁ・・・」
和「あんたたちさすがにオーバー過ぎない?その女子生徒が存在した証拠ってないんでしょ色部。」
柚「そうだね。水晶学園の生徒としか言われてないし、誰だか確かめようがないよ。」
咲「次は誰が話す?」
姫「それなら我が話すのだ。立屋敷家に語り継がれる怨念の話を・・・」

姫「この話は我がお母様から昔聞いただけの話なので真実は分からない。
我の曾おじい様は立屋敷家の100代目家元でとても厳格な性格だったそうだ。
しかし、女遊びが激しく妻である曾おばあ様をいつもほったらかしにしていたらしい。
そして、曾おじい様の態度に腹を立てた曾おばあ様は曾おじい様に対してまともになってほしいと怒ったそうだ。
ですが曾おじい様は謝罪するどころか「女遊びが激しくても別にいいじゃろうに。それにわしは若い子が好きなんじゃ!」
と言って取り合わなかったそうだ。曾おばあ様はそんな曾おじい様の態度に絶望して3日後に庭の井戸に身を投げて自殺したらしい。
その後も曾おじい様は反省などせず、女遊びを繰り返していた。そんなある日、庭の井戸から何か声が聞こえた。
「お前は・・・お前は絶対に許さない・・・」
その声を聴いて怖くなった曾おじい様は井戸を破壊するよう工事屋に頼んで埋めてもらったそうだ。
幸いその井戸はすでに使われていなかった古井戸だったので水も引かれてなかったこともあり工事はすぐに終わった。
だが、工事が終わったその晩に曾おじい様は夜寝ているときに再びその声を聴くことになってしまったのだ・・・
「お前も・・・お前も地獄へ道連れにしてやる!」
曾おじい様は発狂して飛び起き、どこかへ走り去ってしまったらしい。
そしてその翌朝・・・曾おじい様は屋外の井戸を埋めた場所で亡くなっていた・・・原因不明の死だったそうだ。
曾おじい様の死亡後、立屋敷家には後継ぎがいなくなってしまい立屋敷家の分家から養子として入ってきた、のおじい様が跡を継いだそうだ。
井戸が壊された後からは今でも曾おばあ様の怨念に満ちた声が聞こえると言われているのだ・・・」
凛「中々怖いお話ですね・・・」
水「女遊びにかまけていた曾爺さんの自業自得にも見えるけどな。」
柚「やっぱり浮気は良くないよね。」
和「あら、それだと一つおかしいことがあるわね?」
姫「む、なんなのだ・・・?」
和「あんたの曾爺さんで立屋敷の直系が途切れたってことは・・・近藤勇の子孫って部分が矛盾するじゃない。」
姫「それは違うのだ!我の母方の家系が勇さんの子孫の家系だから立屋敷家の子孫で勇さんの血をひいているのは我の代からになるのだ!」
麗「複雑なのね苺瑠の家系って。」
咲「次は誰が話す?どんどん行きましょ!」
奈「咲彩さん楽しそうですわね・・・」
ア「それならワタシがロシアに伝わる未確認生物についての話をするデス!」

ア「皆さんはご存知ですか?未確認生命体のことを・・・
未確認生命体とはいまだにその存在が明らかになっていない生物のことを言うデス・・・
ワタシの姉の一人、エルザ・チェルノフは昔この未確認生命体に関する研究をしていました・・・
姉が研究していたのはロシアに生息すると言われている大足を持つ生物ビッグフットデス。
姉は5~6人ほどの研究グループに所属していて実際の現場で撮れたデータを基に解析などをしていました。
ある日のことデス。姉は大学に行く前に何か嫌な予感を感じ取ったらしいかったようで・・・不安になりながら大学に向かいました。
大学に着き、研究室のドアを開けるとそこには無残な光景が・・・姉の仲間である研究員が一人残らず食い荒らされたような状態で倒れていたんデス・・・
しかも、その現場には大きな足跡が残っていたらしいのデス。まるでビッグフットがこの場所に来たかのような・・・
その後、唯一の生き残りとなった姉は二度と未確認生物の研究をしないことを誓い、別の研究をするようになったのデス・・・」
環「すっごい後味悪いじゃないこの話・・・ちょっと怖かったし(小声)」
麗「アンってば怖くなかったんじゃないの~?」
環「何言ってるのよ!これは幽霊じゃなくて生きている生物による・・・」
凛「未確認生命体は、存在が確認されてないから生存してるかどうかはあいまいのような気も・・・」
環「うるさいわね!怖かったわよ!怖かったっていえばいいんでしょ!」
柚「ポラちゃんのお姉さんはその後何もなかったの?」
ア「ハイ。姉は今ではロシアの歴史の研究をやってマス!20歳ですがまだまだ元気デスヨ。」
和「元気そうでよかったわ・・・さて、次は誰がやるの?」
凛「それなら私が少し話しましょうか。」

凛「皆さんは市松人形って知ってますか?そう、私と同じように黒髪のロングヘアを持つお人形のことです。
このお人形は夜な夜な髪が伸びると言い伝えられてますよね?
実は私は昔、このお人形を伊集院家の当主からいただいたことがあるのです。今回のお話はその時のことです。
お人形をもらった次の日の朝、私は頭に違和感を覚えました。ですが、鏡で見ても特に変わりなかったので放置してました。
そして、その日から1週間後・・・ついに私は異変に気付いたのです。なぜなら・・・お人形の髪が伸びているのに引き換え、
私の髪はクレーターのようにところどころが剥げていたのですから。つまりこのお人形に私は髪の毛を奪われていたという事になります・・・」
麗「この話冗談抜きで怖い・・・」
咲「ってことは今あんちゃんの髪の毛ってウィッ・・・」
凛「違います!その後怖くなって、人形を伯父さんに頼んで供養してもらったら髪の毛も元に戻ったのでこれは地毛です!」
ア「髪の毛の呪いデスカ・・・女の子にとっては天敵デスネ・・・」
環「なんか作り話っぽいわね~・・・そういえば、怖がり2人組はどうしたの?」
奈「2人ともさっきのラニーさんの話が怖かったみたいでそこで気絶してますわ。」
奈摘が指さした方では嘉月と陽姫が気絶していた。
麗「さすがに耐えきれなかったのね。」
和「本当に怪談が嫌いな人はちょっとした話でも耐えられないもんだから。」
咲「あら、そろそろ時間になるわね。悪いけど次の話で最後にしましょう。誰が話す?」
エ「それなら私が背筋が凍るような話を・・・」
エレナの話はすさまじい物だった。幽霊などの怪奇現象を全く信じていない環輝ですら恐怖に震わせるほどであった。
また、話し方や恐怖への引き込み方が上手でその場にいた全員をホラー映画のような世界に引き込んだようであった。
エ「・・・という伝説とかが残っていると言われている。どうだった?」
「「「「「「すっごく怖かった!」」」」」」
エ「そうですか。それは良かった・・・」
咲「はい、それじゃ今日はここまでね!」
そういう咲彩も若干足が震えている。
その時、先ほどまで気絶していた陽姫と嘉月がようやく意識を取り戻した。
嘉「終わったん・・・?」
陽「やっと解放されるよぉ・・・」
咲「それじゃ、みんな気を付けて帰ってね。最近不審な男が出たりして危ないから。」
咲彩は皆を見送ると、怪談に使った部屋の片づけを始めた。
咲「(それにしてもあのエレナちゃん何か変なのよね・・・私の霊感が正しければあるいは・・・)」
咲彩は部屋の片づけをしながらあることを考えていた。

怪談大会から数日たったある日・・・
麗「あんときすごく怖かったわ・・・」
環「私ですら信じ切っちゃったわよ。」
凛「鷲宮さんはこういう話に強いのかもしれませんね。」
奈「あれが事実だろうと作り話だろうと信じてしまいますわよね。」
そこにエレナがやってきた。
エ「あれ?みんなで何の話をしているの・・・?」
柚「あ、この前のエレナちゃんの怪談話が怖かったなって話をしてたんだよ。」
エ「え?私怪談大会にはいってない・・・あの日はおじい様のお手伝いで幕張まで行ってて参加できなかった・・・」
麗「それならあの日いたエレナちゃんは・・・?」
凛「何だったんですか・・・?」
咲「(やっぱりね・・・そうじゃないかと思ったわ。)」
あの日のエレナはいったい何者だったのだろうか・・・?咲彩だけは何かを確信したようであるが真相は闇の