10月31日はハロウィンの日である。1組のメンバーも奈摘の家の庭を貸し切って仮装してハロウィンパーティをすることにした。
広大な天宮城家のお屋敷の庭を貸し切っているとはいえこの場にいるのは1組の生徒だけなので、そこまで大規模ではないのだが・・・
庭の真ん中に設置された舞台で奈摘が開幕のあいさつを始める。彼女の仮装は自分の漫画のLOVE!ヴァンパイアガールのキャラである望月レイナの格好のようだ。
望月レイナは彼女と同じ金髪なので服だけ変えればいい。とはいっても作中でのレイナの装いはお嬢様っぽいワンピースなので、いつも通りの普段着と変わりないのだが・・・一応アレンジを少しでも加えようと思ったのか髪型をポニーテールに変え、小さな帽子を頭にのせているようだ。
奈「今日はわたくしの家にお集まりいただきありがとうございますわ。心行くまで楽しんでいってくださいまし。
テーブルに用意してある料理はご自由にお召し上がりください。ここの舞台を使って一発芸とかやってもらっても構いませんわ。それでは、have a good time!」
奈摘のその一言をきっかけにパーティが始まる。14人の少女たちだけのパーティだ。
咲「わぁ、みなちゃんは兵士の仮装なんだね!」
水「かっこいいだろ。咲彩の占い師も似合ってるぜ。」
水萌はビキニアーマータイプのヴァルキリー兵士の仮装をしていて髪も下ろして癖をつけている。水萌にしては露出多めだが豪快な彼女にはピッタリの仮装であるとも言えるだろう。
咲彩は占い師の仮装をしている。全身を銀色の派手なドレスに包み、手に水晶玉を持っている。ドレスにつけられたアクセサリーはどれも輝かしい光を放っている。
咲「こういう時だからこそいつもできないような格好してみたくなるよね。都会の方で騒ぎを起こしているようなことはしたくないけど・・・」
水「そうだな、あの暴走行為は異常そのものだ。アタシも人前で髪下すのなんて何年ぶりだろ・・・」
陽「さあちゃんにみなちゃん。2人とも仮装似合ってるね!」
咲「ありがとう。はるちゃんも可愛いわよ。」
陽「本当に?ありがとぉ~。」
陽姫の仮装は民族衣装のエプロンドレスのようだ。身長こそ高いものの可愛らしい顔立ちの陽姫に似合っている。
環「いいでしょハルの衣装。環輝もハルに仮装衣装選んでもらったんだし。」
咲「そう言うアンちゃんの仮装は・・・マッドサイエンティストの科学者さん?」
環「あったり~!今日だけはまともじゃない化学者になってみたし。」
環輝はマッドサイエンティストっぽい化学者の仮装をしていた。ボロボロの白衣に眼鏡のレンズを白くみせる細工をしているのがそれっぽい。
柚「陽姫ちゃんはセンスが良くて助かるよ。ボクのも選んでもらっちゃった。」
柚歌の仮装は海賊だ。お団子頭なので海賊帽は被っていないが、腰に何本もある作り物のサーベルがそれっぽい雰囲気を出している。
姫「我も。だけどこの衣装ちょっと恥ずかしいな・・・」
苺瑠の仮装は丈の短いチャイナドレスだ。髪もお団子にまとめてシニヨンキャップを被っており、小道具として扇子を持っている。
陽「たまちゃんはいつもおとなしいからこういう時は豪快なほうがいいんじゃないかって思ったの。苺瑠ちゃんはいつもからは想像できない衣装ということでチャイナドレスにしてみたんだよぉ。やっぱり他の子をコーディネイトするのって楽しいなあ。」
咲「はるちゃん楽しそうだね・・・」
和「あたしには神宿だって楽しんでいるように見えるわよ。」
咲「ことちゃん。そういうことちゃんだってセーラー服の仮装にあってるよ。」
和琴の仮装はセーラー服だ。普段の髪型である三つ編みに似合っている。
和「ありがと。あたしたちの学校って普段は私服高校だからたまにはって思ってさ。神宿は巫女の仮装してくると思ったけどそうじゃないのね。」
咲「巫女装束も素敵だけど、いつも着てるからこういう時ぐらい占い師の格好したいって思ってね。」
柚「和琴ちゃんは今日は一人で来たの?」
和「あーいつもの2人と来たんだけどさ・・・あいつらの甘い空気に胃もたれがして。」
水「いつも2人って愛麗と凛世か・・・」
咲「仲いいもんね。らっちゃんとりんちゃん。」
水「いやあいつらの空気は恋人以上の甘ったるさがあるからな・・・」
麗「ちょっと!あたしたちのいる前でそういうこと言うの失礼じゃないの!?」
水「うおっ!急に出てくるなよびっくりするだろ。」
水萌が振り返ると愛麗と凛世が立っていた。
麗「あたしたちが異常なのは認めるよ。だけど水萌だって咲彩とそういう関係にあるんだからあたしたちにとやかく言うことないんじゃないの。」
凛「はい・・・ちょっと心外だと思いました。」
水「それもそうだな・・・悪かったよ。恋愛の形は自由なのにアタシ何言ってんだろうな。」
咲「みなちゃんはらっちゃんたちのこと気持ち悪いって意味で言ったんじゃないんだと思うよ。周りに目もくれずに愛し合う2人が羨ましいんだよ。私があまり積極的じゃないから・・・私も2人みたいにもっと積極的になれたらなぁ。」
凛「いえ、そんな神宿さん・・・私も消極的な方ですし・・・」
柚「それよりも2人の仮装も素敵だね。」
麗「あたしは前に着たやつを嘉月に改良してもらったのよ。中々いいでしょ?」
愛麗の仮装は去年着た魔女の衣装だ。嘉月の手が加わっており、いつもとはまた違った雰囲気を醸し出す。愛麗はスカート嫌いのためか、下にはしっかりズボンをはいている。
凛「私は修道女になってみました。キリスト教は信仰していませんけどね。」
凛世の仮装はシスターだ。クールでありながら優しげな雰囲気を持つ凛世に良く似合っている。
和「ねえ夜光、あんたって吸血姫一族の末裔かなんかじゃなかったっけ?」
凛「そうですよ?それがどうかしたのですか?」
和「シスターって吸血鬼と対になる存在じゃない。拒絶反応みたいなのでないの?」
凛「全然大丈夫ですよ。私は吸血鬼要素がほとんど受け継がれていないのです。十字架は平気ですし、それに昼間に出歩いていても何の問題もないじゃないですか。」
和「そういえばそうね・・・今更気にするほどの事でもなかったわね。」
嘉「せやな。いまさら人んちの事情に首突っ込んだところで何も変わらんしなぁ。」
エ「その通り・・・」
咲「あ、嘉月ちゃんにレナちゃん。2人も仮装してきたんだ。似合ってるよ。」
嘉月は普通のブラウスにかぼちゃお化けの装飾を所々にした仮装だ。スカートもかぼちゃ風である。
一方のエレナはオオカミ娘。耳とシッポはもちろん、身体には灰色のワンピースを纏い、手袋も肉球仕様。
嘉「あんがとさん。ウチはかぼちゃ娘。着ぐるみも考えたんやけど動きずらそうやったから。」
エ「そして私は・・・オオカミ娘。少食だけどみんな食べちゃうよ。」
嘉「レナちゃんのはウチが勧めてみたんやで。」
和「なんだか仲いいわねあんたたち。」
嘉「まあウチら元々付き合ってる関係やったからなぁ。」
エ「そ、元カノ同士・・・それに寄り戻しちゃった。」
凛「つまりお二人は恋愛関係に戻ったということなんですか?」
嘉「せや。ウチがレナちゃんにうまく寄り添えへんかったから破局してもうたもんやからな・・・」
エ「違う、私が無口すぎて上手く気持ちを伝えられなかったせい。嘉月ちゃん悪くない。」
麗「ってことは和琴は・・・」
和「そうね。あたしは振られましたよっと。鷲宮が雷久保と一緒にいるのが幸せならそれでいいし笑って送り出すけどさ。」
そんな風に軽く笑い飛ばした和琴の近くに先ほどまで司会舞台に立っていた奈摘が和琴のそばまでやってきた。
奈「ですが、和琴さん。今はわたくしがいるじゃないですか。」
和「そうだったわね。というわけで今現在あたしといい関係にある天宮城でーす。」
咲「なっちゃんとことちゃんが恋愛関係に・・・」
陽「なんだか意外な組み合わせだねえ。」
和「そうでもないわよ。あたしと天宮城、それに生泉と夜光で結構遊んでるしさ。」
奈「だからと言って、捨てられた余り者同士でくっついているわけでありませんのでご安心を。」
嘉「うっ・・・それは・・・」
エ「ごめんなさい・・・」
和「別にあんたたち悪くないでしょ。」
環「さっきから聞いてれば・・・せっかくのお祭りにそんな暗い話したらマジで空気悪くなるから、楽しんだ方がいいし。
恋愛関係なんてさ、性別関係なしに自分が心から好きな子と一緒になれればそれでいいじゃん。」
環輝はパーティ会場にある料理にがっつきながらそう言った。
麗「あんたは料理食べすぎなのよ。」
ア「皆さん、遅くなったデス!」
その時、ラニーがやってきた。見た目はコートを羽織っているが、目と口の部分以外に包帯をしているのでおそらくあのお化けだろう。
姫「君は・・・何の仮装をしてきたのだ?」
ア「ワタシはミイラデス!ですが・・・この下包帯しか着ていなくて寒くてコート脱げなくなったデス・・・」
環「それって痴女みたいなもんじゃん・・・」
嘉「ラニーちゃん、裸に近い仮装をするときはボディスーツ着たほうがええで。」
ア「ボディースーツですか・・・思いつかなかったデス!今度試してみマスね。」
奈「ま、まあ色々ありますが・・・仮装は人それぞれですわ。何はともあれパーティ楽しんでいってくださいみなさん!
それともしよければ・・・誰か舞台上で何かやってくださいません?」
奈摘は自らが先ほどまでたっていた舞台を指さしながらそう言った。
ア「それならワタシがお得意の大道芸を・・・」
麗「ちょ、ラニーは下包帯しか着てないんでしょ。それで大道芸なんかやったら色々とまずいわよ・・・」
和「包帯がほどけたらいろいろ丸見えよね。」
ア「そうでしたネ・・・それなら奈摘サン、白いボディースーツ用意してもらえないデスか。」
奈「ボディスーツでしたら手配できますわ・・・他に必要なものはありませんか?」
ア「道具なら、ここにあるデス。パーティなので何かできないかと思って持ってきておいてよかったデス。」
ラニーはどこからか大きめのトランクを取り出した。
咲「ラニちゃんいつもそんなに大きいの持ち歩いているんだね・・・」
ア「大道芸は道具さえあればできるデス。だから、必要な道具一式を用意するとこれぐらいになってしまうのデス。」
奈「ラニーさん、ボディースーツ用意できましたわ。」
ア「ありがとうデス。それじゃさっそく準備するデス。」
ラニーはボディースーツと道具一式を持って舞台裏に走って行った。
それから5分後舞台裏に行っていたラニーが舞台の上に出てきた。包帯の下にしっかりとしたボディースーツを着込んで。
ア「お待たせしましたデス。それじゃさっそく始めるデス!」
はトランクから棒と皿を取り出して皿回しをし始めた。しかも一つではなく両手それぞれに2つと頭の上でもう1つの計3つを回していた。
ア「小さいワタシにとっては安定した回しをするのが中々大変なんデスよ。」
麗「いや、喋りながら皿回しできるだけすごいと思うけど・・・」
ア「じゃ、次行くデス。」
ラニーはいったん皿回しを止めると、取り出した玉乗り用と思われる玉に乗る。そして玉の上で逆立ちしながらバランスを取りつつ、体の柔軟性を生かして玉から飛び上がり、舞台に着地した。
ア「どんなもんデス!・・・それじゃ、ワタシはこの辺にしておくデス。ありがとうございまシタ。」
環「ラニーって相当バランス感覚いいんじゃん。アンじゃ絶対無理だし。」
姫「ああいうのは誰でもできるようになるわけじゃないからな。ラニー君の天性の身体能力とバランス感覚の生み出す奇跡なのだ。」
凛「藤金さん素敵ですね。私もピアノ弾きたくなっちゃいました・・・天宮城さん、ピアノって用意できますか?」
奈「電子キーボードでよければなんとかなりますわ。」
凛「それならいつも使っているので大丈夫です。お願いします。」
奈「分かりましたわ。使用人のみなさん、電子キーボードの手配をお願いしますわ。」
奈摘が指示を出してから数分後、ステージ上に電子キーボードが設置され凛世がその前に立つ。
凛「それでは・・・行きます。」
凛世が電子キーボードを弾こうとすると、唐突に環輝が声を上げた。
環「ちょっと待って凛世。アンも参加させてくれない?これでさ。」
環輝がバイオリンを見せながらそう言った。
凛「いいですよ。早く上がってきてください。」
環「おけーい。」
環輝は舞台に上がり、凛世の横に立つとバイオリンを構えた。
凛「花蜜さん、準備はいいですか?」
環「いつでもオッケーだよ。」
凛「それでは・・・今度こそ行きます。」
手慣れた手つきで電子キーボードを奏でる凛世。それに合わせてバイオリンの音を合わせる環輝。その音色はパーティ会場にいる全員を魅了した。
咲「素敵だね・・・」
和「夜光のピアノはもちろんだけど花蜜のバイオリンも相変わらずきれいな音色ね。」
嘉「演奏に引き込まれてしまいそうやで・・・」
ア「うっとりするデス・・・」
エ「おじい様が言ってた。音楽は聞くものでもあるけど本来は感じるものだって・・・」
麗「凛世のピアノいつは聞いてもうっとりするわね。それに合わせたアンのバイオリンもいい感じ。」
陽「愛麗ちゃんが音楽を集中して聞いているって珍しいねえ。」
麗「あたしだって音楽ぐらい聞くけど。」
そんな中、凛世と環輝が演奏を終えた。
凛「これで演奏を終わります。ありがとうございました。」
環「最後まで聞いてくれてありがとねー!」
挨拶をして凛世と環輝は舞台から降りる。
麗「それにしても・・・なんだかハロウィン関係なくなっちゃったわね。」
柚「愛麗ちゃん何かハロウィンっぽいイベント思いついたの?」
麗「まあね・・・奈摘、調理器具と料理設備と指定した食材用意できる?調理台とオーブンだけでいいんだけど。」
奈「ええと、最低限であればなんとか。」
麗「ありがと。ハロウィンっぽいことあたしがやってあげるわ。」
凛「愛麗の考えたハロウィンっぽいイベントって何なのでしょうか?」
麗「それは・・・見てからのお楽しみよ!」
30分後、舞台上には調理台、嘉月ジ、オーブン、基本的な調理器具が設置された。
そこにエプロンを着用した愛麗が舞台に昇って説明を始める。
麗「じゃ、今からあたしがハロウィンスイーツを作らせていただきます。」
姫「ハロウィンスイーツか!お菓子作りの得意な愛麗君なら期待できそうなのだ。」
麗「今回は時間も少ないから解説なしでやらせてもらうわよ。」
愛麗は手際よく調理を開始した。まずはかぼちゃを切って嘉月ジで温め、柔らかくしたのをミキサーで砕いてかぼちゃのペーストを作る。
次に粉や砂糖などを計量してしっかり混ぜ、かぼちゃのペーストと混ぜていく。
咲「何を作っているんだろう・・・」
水「かぼちゃ系のお菓子であることは間違いないだろうけどな。」
麗「無言で調理する愛麗・・・素敵です。」
和「あんたは生泉がやってることなら何でもいいんでしょ。」
そして紙でできたカップにバターを塗り、先ほど作った生地を流し込んでいく。生地を全て入れ終えると天板に乗せオーブンに入れて焼く。
エ「ここまで見ると何作っているのか分かってきた・・・」
嘉「せやな。あれはたぶんかぼちゃのカップケーキやで。」
20分後、焼いた事によって生地はすっかり膨れ上がる。その上にあらかじめ作っておいたデコレーション用のチョコやクリームを乗せて飾る。
麗「よし、これで完成っと!」
愛麗の手元には綺愛麗に焼きあがったカップケーキがあった。
麗「それじゃみんなに配る前に・・・今日はハロウィンだしあの言葉をお願い。」
咲「え・・・あの言葉ってなんだろう?」
水「急に言われても分かんねえな。」
凛「愛麗、トリックオアトリートです!」
麗「さすが凛世ね。どうぞ。」
愛麗はカップケーキの中でも一番形がよく出来上がっているものを凛世に渡した。
和「あ、その言葉だったのね。」
麗「ハロウィンっぽいイベントって言ったでしょ。ほら、先に言えた順に配るから。」
水「早い者勝ちかよならアタシも早速・・・トリックオアトリート!」
麗「じゃ、次は水萌にあげるわね。」
愛麗はトリックオアトリート宣言した順番にカップケーキを配って行った。
エ「・・・やっぱり声の小さい私が最後になっちゃったね・・・ありがとう愛麗ちゃん。」
麗「よし、これで全員にいきわたったわね。」
環「ねえ愛麗・・・」
麗「どうしたのアン?甘さの事?」
環「うん・・・」
麗「大丈夫よ。アンに渡した奴はこっそり別に分けて砂糖入れずに作った奴だから。食べてみなさい。」
環「わかったし・・・あ、少し塩が効いてていい感じじゃん。」
麗「最近塩バニラみたいなのが流行ってるっていうから試作品的な意味で塩かぼちゃをやってみたの。それなら食べられるでしょ。」
環「・・・ありがと愛麗。」
麗「どういたしまして。あたしたちの仲でしょ。」
奈「あの裏で環輝さん用の物だけ別に作っていたのですわね。」
咲「らっちゃん器用だね。」
和「生泉のスイーツは美味しいのよね。また腕を上げたみたいね。」
奈「愛麗さんはなぜこんなにお菓子作りが上手なんですの?」
麗「うち昔は家事できる人が誰もいなくてさ・・・それで小さいころからお菓子色々作ってたのよ。」
陽「買おうとは思わなかったのぉ?」
麗「うーん、買うぐらいなら料理の延長みたいな感じでやってみたいって思いが強かったんだ。」
嘉「愛麗ちゃんのお菓子が美味しいのはその時に作ってみるって選択肢をしたからなんやな。」
凛「愛麗は普通のお料理も得意ですからね。私はあまり得意ではないので尊敬してしまいます。」
麗「あんなに上手なピアノ演奏できる凛世に比べたらあたしなんてまだまだよ。」
咲「らっちゃんもりんちゃんも素敵だよ。だからそんなにお互い謙遜し合わないで・・・」
麗「別にそんなつもりないんだけどな・・・」
凛「謙遜ではなく尊重ですよ神宿さん。」
奈「愛麗さんのおいしいお菓子も楽しんだことで・・・次に何かやりたい人はいますか?それと、もう時間が遅いので次の方が最後ですわね。」
奈摘は愛用のスマホの時計を見ながらそう告げた。
和「とはいってもあたしは特にやりたいことないかな。」
水「アタシも英語ぐらいしかできねー。それに舞台に立ってやるようなことなんて準備してねーしな。」
咲「私も・・・占いはしょっちゅうみんなにやってるから。」
柚「なら、ボクがやろうか?少しだけならお芝居できるしさ。」
姫「まさかあれをやるのかい柚歌君?」
柚「みんながネタに詰まってるみたいだし、癒しを与えられればなって思ってさ。陽姫ちゃん、ちょっと協力してくれない?」
陽「いいよぉ。」
柚「それじゃ、早速舞台に上がろうか。」
舞台に立った環は陽姫を右側に立たせ、解説を始める。
柚「今からボクがギャップ萌えについて説明していくよ。みんなも知ってのとおり女の子は声の高さや仕草、見た目が変われば全く違うようにみえたりするよね。それを今から実演してみるね。陽姫ちゃん、何でもいいからボクに挨拶してみてくれる?」
陽「う、うん・・・今日はいい天気だねたまちゃん。」
柚「そうだね。今日は快晴だよね。」
咲「その反応じゃ、いつものたまちゃんと変わらないような気が・・・」
柚「そうだね。これはいつものボクでやったからそう見えるのさ。じゃ、次は声の高さを変えてやってみるよ。
陽姫ちゃん、さっきと同じ挨拶をもう一回やってみてくれる?」
陽「分かったよぉ・・・今日はいい天気だねたまちゃん。」
柚「そうだねっ、今日は快晴で澄み渡った綺愛麗なそらだよねっ。」(高声)
水「すげえ、さっきと全然違って見えるじゃねえか・・・」
麗「声の使い分けでこうも変わるもんなのね。」
嘉「柚歌ちゃんの声綺愛麗やもんな。」
柚「次はこれに見た目と姿勢の変化を加えてみるね。陽姫ちゃん、何回も悪いけどさっきと同じ挨拶もう一回お願いできる?」
陽「うん、今日はいい天気だねたまちゃん。」
陽姫がそう言ったと同時に柚歌はお団子ヘアを解いてストレートロングになり、陽姫の目に自分の胸の谷間が映る絶妙な前かがみ姿勢のポーズをとる。
柚「そうだねっ!でも私は・・・陽姫ちゃんの方がもっときれいだとおもうなっ!」(高声)
凛「すごくかわいいです・・・」
環「これがギャップ萌えってやつなのかな。めっちゃ興奮止まんないし・・・」
奈「あまりにも素晴らしすぎて鼻血が止まりませんわ・・・」
柚「それじゃ、ボクのギャップ萌え講座はこの辺で終わりにするよ。皆もよかったら恋人とデートしているときにやってみたらどうかな?」
柚歌は解いた髪を元のお団子ヘアに結いなおしながら締めくくり、舞台を降りていく。
陽「大好評だったみたいで良かったねえたまちゃん。」
柚「だけど、みんな悶絶しちゃったみたいだし・・・ちょっとやりすぎちゃったかな・・・」
陽「そんなことないよぉ。私は好きだよ。たまちゃんのギャップ萌え。」
柚「ありがとう陽姫ちゃん。」
その後、なんとか奈摘の鼻血が止まりハロウィンパーティも終盤だ。
奈「それでは最後に主催者のわたくしから挨拶をさせていただきますわ。皆様本日はお忙しい中パーティにご参加下さりありがとうございました。
わたくしからのささやかなお礼・・・季節外れの花火を最後にお開きとさせていただきます!」
奈摘がそういうと同時に天宮城家のお屋敷のバックにたくさんの花火が打ちあがった。
咲「秋に見る花火も素敵だね・・・」
水「そうだな。夏じゃなくたって花火ってもんは輝いてるってアタシは思うぜ。」
和「天宮城・・・今日は本当に楽しかった。それとあたしと恋仲になってくれてありがと。」
奈「いえ、和琴さんこそこんなオタク漫画家臭いわたくしを選んでいただいて感謝の気持ちでいっぱいですわ。この花火はそのお礼も兼ねてるんですのよ。」
和「そうだったのね・・・ほんとあんたはロマンチストね。そういうところ好きよ。」
麗「和琴たち中々上手くいっているみたいね。」
凛「はい。とても幸せそうでなによりです。」
季節外れの秋の夜空の打ちあがる花火は輝く。新たな関係を持った和琴と奈摘を祝福するように・・・