和琴、追いかける 麗Side

その日、神原咲彩はある目的のために騎ノ風駅に向かっていた。
咲「それにしても展示会の件は急な話だよね・・・さて、駅入り口のバス停に着いたよ。ここで待ってればらっちゃんと合流できるはず・・・」
咲彩はバス停の前に着くとその近くに立って待つことにした。5分ぐらいすると愛麗がやってきた。
麗「咲彩~!」
咲「らっちゃん。」
麗「ちょっと遅かったみたいね・・・待った?」
咲「全然問題ないよ。」
麗「ちょっとジオラマをあっちに発送するのに手間取っちゃってね・・・」
咲「ジオラマは大きい物だからね。それじゃあ行こうか。」
麗「そうね・・・目的地は騎ノ風駅の隣の隣にある飛鳥駅近くのショッピングモールだっけ?」
咲「そうだよ。りんちゃんから地図の情報はもらってるから私が案内するね。」
その後ろ姿をしっかりと見張る一人の陰にまだ気づくことはないようであるが。
和「あれは神宿と生泉・・・2人してどこに行くのかしら?もしかして浮気・・・?」

愛麗たちは話をしながら騎ノ風駅からICカードで改札を通り電車に乗り込む。
咲「それにしても展示会なんて私初めてだよ・・・本当に私でよかったのかな・・・」
麗「心配しなくてもいいわよ。主催者の凛世によれば芸術作品なら何でもいいって言ってたし。それにあたしは咲彩の字、好きだよ。」
咲「ありがとうらっちゃん。あ、それともうすぐ飛鳥駅だよ。」
麗「そうだったわね。下りましょうか。」
しばらくすると目的地の駅に到着し、2人は下車した。そして、少し遅れて尾行している和琴も2人に気付かれないよう降りた。
和「意外に近くで降りたわね・・・このあたりは確か商業施設が多いことで知られてるはず・・・」

2人は大型商業施設に向かって歩きながら色々と会話を弾ませる。
咲「らっちゃん今日は白いズボンなんだね。爽やかで似合ってるよ。」
愛麗は今日は白いオーバーオールと青色のチューブトップを着用していた。チューブトップなのでオーバーオールの
脇から見える肌が可愛らしい。カチューシャなどの小物もいつもの赤ではなく青い物を着用している。
麗「それをいうなら咲彩だって白ズボンじゃん。いつもはスカートなのに。」
咲彩はマリンボーダーの短いシャツに白いデニムパンツを合わせている。実に大人っぽくてセクシーである。
咲「私実はズボンの方が好きなんだよね。いつもスカートなのは私自身を幼く見せるためだよ。」
麗「ふーん・・・咲彩はスカートの方が好きなんだと思ってたけど違うのね。それにしても咲彩は背高いし大人っぽい着こなしで着て羨ましいわよ。あとツインテール下ろせばもっとよくなると思うけど。」
咲「私が髪下ろしたら老けて見られちゃうよ・・・それにらっちゃんだって髪の毛ふわふわで可愛いと私は思うよ。」
麗「ありがと。」
咲「うん・・・話変わるけどらっちゃん・・・あれ和琴ちゃんじゃない?」
麗「和琴?・・・ああ、確かにそうかもね。あんな長い三つ編みの子はこの辺だとあいつぐらいだし。」
2人は後方で怪しい隠れ方をしながら尾行している人影に気付いたようだ。和琴は自分の方に視線を向ける2人に対してこんなことを考えていた。
和「(神宿と生泉がこっち見てるわね・・・気づかれたかしら・・・)」
麗「展示会のことあまり知られたくないし・・・まく?」
咲「そうだね。」
2人は和琴に気づかないふりをして、大型商業施設の中に入って行った。
和「どうやら2人とも気づいていないみたいね・・・これは大スクープの予感よ!さて、あたしも入ろっと。」
和琴も2人を追って、商業施設の中に入って行った。

大型商業施設の中はイノンモール騎ノ風ほどではないが様々な店が入っていた。中には歯医者や皮膚科などの病院もテナントとして入っている。
咲「和琴ちゃん追ってきてない?」
麗「たぶんまいたから平気だと思うけど・・・見当たらないし。」
咲「それはよかったよ・・・展示会の件はあまり知られたくないしね。」
和琴がおってこないのを確認すると目的の場所に向かって歩き出す。
麗「それにしても咲彩、わざわざこんなところでやる必要があるの?」
咲「うん・・・この展示会は秘密事項だからあまり目立つところではできないのよ。」
麗「そうなのねそれでこれからどこの店に行くんだっけ?」
咲「話し合いの舞台にしてあるのはあそこのフードコートよ。先にりんちゃんとなっちゃんがきて場所取りをしているはず。」
麗「1組メンバー8人揃っての大仕事だもんね。展示会の開催期間は5日間だっけ?」
咲「一応そういう話にはなってるけど、らっちゃんのこと無理やり誘っちゃったみたいでごめんね。」
麗「そんなこと思ってないわよ。咲彩と一緒にいるのたのしいわよ。それに愛だっているし。」
咲「らっちゃんは本当にゆーちゃんが好きなんだね。」
麗「うん、あたしも凛世のこと大好きよ。ん・・・ポケットに何か入ってる。何かしらこれ・・・」
愛麗が胸ポケットから取り出したのは和琴が事前に仕掛けた発信機だった。
麗「たぶんゴミね。ちょっと捨ててくるわ。」
愛麗は備え付けのゴミ箱に発信器を捨てた。
咲「それじゃ行こうか。」
発信器をゴミに捨てた2人は待ち合わせ場所へと再び足を進める。ほどなくして咲彩と愛麗は凛世と待ち合わせたフードコートの一席に着いた。そこでは凛世と奈摘が先に来て待っていた。
麗「凛世~!」
凛「愛麗!!!」
愛はすぐさまヘッドフォンを首かけに戻して愛麗に飛びつく。
麗「クールなあんたなのに熱いお出迎えありがとう。」
凛「はっ・・・私ったら・・・ええと、今日は参加していただきありがとうございます。」
奈「咲彩さんここまでお疲れ様ですわ。」
咲「奈摘ちゃんも場所取りご苦労様。」
奈「誰かに見つかったりしてませんわよね?」
咲「たぶん・・・大丈夫だと思うよ。」
奈「分かりましたわ。それでは他の皆さんを呼びますわね?」
奈摘がスマホで連絡を取るとしばらくして水萌、嘉月、櫻子、柚歌がやってきた。
嘉「待たせてごめんなぁ。」
櫻「柚歌ちゃんが可愛い服に見とれちゃってさ・・・」
柚「ごめん・・・でも可愛かったんだよあの服・・・あとで買おうかな。」
どうやらこちらも4人で行動していたようだが柚歌が可愛い服に見とれたため、合流時間が遅くなってしまったらしい。
凛「それでは全員そろいましたし、向かいましょうか。」
その後、8人はフードコートを出て、愛の案内でシャッターの閉まっている空き店舗だと思われる場所に行きついた。
水「ここが展示会をする空き店舗ってわけか。」
麗「こうやってショッピングモールのシャッターが閉まっている場所って物悲しいわよね・・・」
柚「ついにボクの初めての個展が・・・」
咲「たまちゃんだけの展示会じゃないよ・・・」
柚「それは分かってるよ。」
嘉「ウチの力作たちをたくさん並べたいわ~」
凛「それではみなさん、こっちの裏手にまわ・・・」
その時、背後で大きな物音がした。
和「わわっ・・・」
ソファーの陰から何者かが出てきた。8人のことを追跡していた和琴だった。
麗「・・・何してんの和琴。(まあ気づいてたけどね・・・)」
1時間にも及ぶ尾行はこうして終わったのだった。
和「あ~!見つかっちゃった!!!」
櫻「いきなり大声あげないでよ・・・」

和琴はその後、空き店舗に連れ込まれ愛から詳しい話を聞いた。どうやら凛世はこのショッピングモールから展示会を依頼されていたらしい。展示会の詳しい内容は一つ上の作品である和琴、追いかけるを参照とのこと。
その後、彼女はしばらく
「せっかくの大ニュースだと思ったのに・・・生泉と神宿の浮気現場~!」
としばらく嘆いていたという・・・