謎の手紙

その日、愛麗はいつものように自分のポストに来た郵便物を受け取っていた。
麗「ええと通販で頼んだ奴と祖父さんに頼まれて注文したバイクの部品と・・・あら?何かしらこれは・・・」
愛麗が手に取った郵便物には差出人が書かれていない茶封筒だった。表面に生泉愛麗様とは書かれていたが。
麗「あたし宛かぁ・・・読んでみよ。」
愛麗は部屋に戻るとペーパーカッターを使って封筒を開く。中には1枚の紙と、写真が何枚かはいっていた。
愛麗はまず手紙を読むことにする。
麗「ええと・・・親愛なるわが娘・・・娘ってことはあいつからか・・・」
愛麗はこの時点で気を落とす。母親は愛麗のことを娘とは呼ばないのでそれ以外だともう1人しかいない。愛麗の母親に精子の提供を行った男・・・愛麗の生物学上の父親である。愛麗はこの父親のことが大嫌いだった。彼は大学教授であるものの、いわゆるチャラ男をさらに不真面目にしたような奴で浮気は日常茶飯事という救いようのない男である。創や愛麗に性的虐待をしようとしたほどである。なぜこの男の遺伝子でIQ180の愛麗が生まれたのかは謎である。
麗「親愛なるわが娘へ・・・これまでのことを謝罪して一緒に暮らしたい。もちろんお前だけでなく創や楓も一緒にだ。俺のやっている事業も軌道に乗って、今では年収1200万円を稼げるほどになったんだ。そんな俺の誠意を見てほしいしお前の祖父さんだってこの先長くない。お前の答えをイノンモール騎ノ風地下にある第2倉庫で待つ・・・こいつ今までしたこと棚に上げて頭おかしいんじゃないの・・・ばかみたい。」
手紙を読み終えた愛麗はあきれてものも言えなくなった。その時手紙がもう1枚あることに気が付いた。
麗「あら?まだ続きがあるのか・・・」
麗「もし取引に応じないようなら添付した写真をネット上にばら撒く・・・写真?そういえば・・・」
愛麗は手紙に添付されていた写真を見てみる。しかしそれは・・・」
麗「って、何よコレッ!!!」
その写真は愛麗が着替えをしている写真で下着姿や風呂に入っているところまで撮られていた。
麗「あんのやろ・・・警察に突き出してやる!!!」
愛麗は怒りに任せて父親の指定した場所に向かう。しかし・・・愛麗はそこに向かったまま帰ってこなかったのである。

愛麗が家を飛び出してから数時間後。愛麗の家である小型マンションサウスハイツの前には警察が来ており、警察に捜索届を出した愛麗の祖父から詳しい話を聞いていた。
愛麗が行方不明になったという話を聞いた凛世たちは愛麗の妹である楓の部屋で楓から詳しい話を聞いていた。
凛「愛麗がいなくなったって・・・本当なんですか?」
楓「うん、私が家に帰ったころにはもういなかったのよ。もうすぐ晩御飯だから愛麗ちゃんにご飯のメニュー危機に行こうと思って愛麗ちゃんの部屋に行ったら誰もいなくて。」
和「なんか手がかりになりそうなものとかなかったの?」
楓「そういえばこれが愛麗ちゃんの部屋に落ちてたんだけど・・・」
楓はそう言うと2つ物を取り出す。1つは表面に生泉愛麗様と書かれた差出人不明の封筒。もう一つは女性の胸から足の付け根にかけての体と思われるものが映った写真だった。
姫「封筒と写真が落ちていたのか・・・嘉月君、君は写真に詳しかったよな、見て分かることはないか?」
嘉「うーん・・・材質からしてプリンターで印画紙に印刷した写真やってことは分かるねんけど。」
咲「この写っている人が誰だかわかればいいんだけど・・・」
奈「嘉月さん、わたくしに写真を貸してくださいまし。わたくしのデータと照らし合わせれば何かわかるかもしれませんわ。」
嘉「ええけど・・・」
奈摘は嘉月から写真を借りると、小型のPCを使って写真とPC内にあるなんらかのデータを見比べる作業を始めた。そして作業を始めてから10分後・・・
姫「奈摘君、何かわかったことあるかい?」
奈「ええ、これに写っているのはおそらく愛麗さんの体ですわね。」
楓「ええ!これ愛麗ちゃんの体!?・・・だけど、なんでわかったの?」
奈「愛麗さんの体には特徴があるんですわ。愛麗さんは自分で作ったお菓子の試食でもしているのかお腹周りに他の方に比べて少しだけ余分な脂肪があるんですわ。」
柚「脂肪の付き具合か・・・だけど生泉が太ってるなんてあたしたちから見ても全然わからないけど。」
奈「それは目の錯覚でごまかしているだけですわ。愛麗さんが好き好んできている服・・・オーバーオールで目立たないんですわ。」
咲「そっか、らっちゃんのお洋服ならお腹の部分は隠せるし、体型もあまり目立たないよね。」
奈「それに加えて愛麗さんは胸が大きいですから基本はそっちに目がいきますし、脂肪がついているとはいえ十分痩せている部類に入りますから。」
凛「愛麗がその話聞いたら怒りますよたぶん・・・」
姫「だが、なぜ愛麗君はこの写真を残して失踪したのだろうか・・・不可解だな。」
凛「そうですね・・・せめてこの写真を撮った人物が分かればいいんですけどね・・・」
和「妹、あんた生泉のことで最近変わった様子とかはなかったの?」
楓「そうね・・・そういえばなんか最近誰かに見られているような気がするって愛麗ちゃん言ってたなぁ。」
咲「誰かに見られているってことはストーカーされてたって事?」
楓「私も詳しく聞いたわけじゃないから良く分からないけど、死角から視線を感じるみたいなことは言ってたわよ。」
奈「死角ということは愛麗さんの目では見られない範囲から見ているわけですわね・・・そうなるとこの写真を撮影した
人物が一番怪しいってことになりますわね。」
和「だけどこれ胸の写真じゃない。この写真みたいに胸は正面から取らないと無理なんじゃない?」
嘉「それができんねん。盗撮者はやっかいもんでありとあらゆる手段を使って盗撮すんねん。
この写真は、愛麗ちゃんの上から取ったんやろうな・・・天井の換気扇にでも隠れて・・・」
凛「上から取ったのであればこの写真みたいに体の正面は写せないのではないですかね・・・」
嘉「おそらく目に見えにくいレベルの小型カメラを使ったんやな。最近は遠隔操作で動かせるもんもあるからたぶんそれ使ったんやな。」
柚「カメラの世界の技術って進歩速いのね・・・」
嘉「まあそう言うカメラが出回ったんは最近のことなんやけどね・・・」
咲「だけど、この写真がらっちゃんの胸だってわかっても肝心のらっちゃんの居場所が分からないじゃない。」
姫「確かに・・・ん?・・・」
凛「どうしたんですか立屋敷さん?」
姫「いや、愛麗君の胸の写真を取るほど愛麗君に固執する人物って愛麗君のことをよく知ってる人なんじゃないかなって思ったのだ。」
和「生泉のことをよく知ってる人って・・・あいつの身内って坂戸に住んでいる母さんと創さんと妹とおじいさんおばあさんだけじゃないの?それに生泉は男嫌いだから彼氏や元彼氏にストーカーされるってことはないだろうし。」
奈「あとは里親さんって可能性もありますわね。」
凛「ですけど、前に愛麗は虐待された思い出がよみがえるって言って里親さんとは絶愛したそうですよ。」
和「妹、今上げた人以外に生泉に深くかかわっている人間はいないの?」
楓「うーん・・・いるにはいるけど・・・」
咲「それって誰なの?」
楓「愛麗ちゃんだけじゃなくて創ねーさんや私にとってもできれば絶対に会いたくない人・・・私たちの母親に精子の提供を行った、私たちの生物学上の父親よ・・・」
凛「・・・以前私たちを襲ったあの人ですか?」
楓「人を脅して恐怖にひきつっている顔を見るのが好きな人だからたぶん会ってると思う・・・それでその人は・・・」
楓の説明を要約するとこうである。自分たち生泉3姉妹は戸籍上の父親を持たない私生児であること。精子を提供したその父親は性格最低の上、実の娘を脅して手にかけるような人であること。自分たちを適当な理由をつけてを引き取ろうとし、祖父に追い返されているとのことだった。
楓「と、まあそんな奴なのよ・・・」
嘉「最低やな・・・」
咲「確かにそんな人なら、らっちゃんを脅してさらってもおかしくないような気がするよ。」
奈「ですが、手がかりが何もないと探しようがありませんわね・・・」
凛「あ、愛麗から10分ぐらい前にメールが入ってました。」
姫「凛世君それに早く気付こうよ・・・それでなんて書いてあるのだ?」
凛「ええと・・・騎ノ風イノン地下の第二倉庫、早く助けに来て、犯人は共犯・・・親父ともう1人は・・・ここで終わってますね。」
和「まあこれで場所は分かったわね。だけど、こんなに大勢で向かったら生泉の親父にばれて監禁されるかもよ?」
奈「それなら凛世さん、嘉月さん、和琴さんで向かってください。わたくしと苺瑠さんと咲彩さんは残って皆さんとの連絡役をしますわ。」
和「向かうメンバーがなんであたしたちなの。」
奈「愛麗さんのつかまっている場所は地下の倉庫のようですので大人数で向かうよりも少人数で向かった方がいいと思うのですわ。嘉月さんはカメラで証拠の写真を撮ってきてくださいな。その写真を使えば立派な証拠にもなりますから。凛世さんと和琴さんは愛麗さんと最も親しいですし、心配でしょう?」
凛「はい、もちろんです。」
和「天宮城の言うとおりだわ・・・すごく心配よ」
奈「だから、直接助けに行ってあげてほしいのですわ。その方が愛麗さんも喜ぶでしょうし。」
凛「分かりました!行きましょう眞武さん、雷久保さん!」
こうして愛麗を救うために凛世、和琴、嘉月の3人はイノン騎ノ風の地下第2倉庫へ向かった。

その頃・・・イノン騎ノ風の地下倉庫では捕まった愛麗と愛麗の遺伝子上の父親が言い合いをしていた。
麗「お前いい加減にしろよ!こんなこといい年になってまでやってて馬鹿じゃないの!?」
父「ふん、たかが16年生きたぐらいで親のやることに口出しすんな!それに俺は永遠の24歳だからな!」
?「そうだよ。お前は今四肢を縛られて自由な動きすらもできねえんだからな。」
麗「お前を親だなんて思ったことはない!!!・・・それよりもまさかあなたがこんな奴と組んでいたなんて・・・」
?「この方はな、私にとっては恩師も同然なんだよ。お前なんかよりも大事な人さ。」
麗「・・・ふざけるなこの裏切り者!!!」
愛麗の悲痛な叫びが倉庫に響き渡る。しかしその声は誰にも届かない、と思ったその時・・・
凛「生泉さん!!!」
柚「助けに来たわよ生泉!」
嘉「はよ帰ろ!!!」
麗「凛世!?和琴に嘉月も・・・なんでここに・・・早く逃げなさいよ!!!」
父「ああ、愛麗の彼女だっけ君?女同士で付き合うなんて気持ち悪いねえ。」
和「あんたみたいな人間に人の性癖を批判する権利なんてないわ!」
嘉「せやで!証拠全部暴いてウチのカメラに収めたるからな!」
父「ありゃもう二人いたのか・・・ちょっと手伝ってくれる?」
愛麗の父親がそう言うと物陰から1人の女性が出てきた。
凛「えっ、あなたは・・・」
和「なんでここに・・・」
嘉「あり得へん・・・絶対夢や・・・」
?「何驚いてんだよ?私がここにいて何がおかしいんだ?この水晶学園講師の・・・芝原蒼生がさ!」
物陰から出てきたのは愛たちもよく知っている水晶学園1年5組担任の芝原蒼生先生だったのだから。
凛「なぜあなたがここに・・・?」
葵「1から説明してやるよ。この人はな私の恩師なんだよ。まさか生泉の親父だなんて思ってもみなかったけどな。」
父「そりゃそうさ。だって俺には娘がいるなんて一言も君に言ったことがないからね。」
葵「それにお前らには言って無かったけど私は平穏人生の会のメンバーさ。まあこの人のススメで入会したんだけどな。」
父「騎ノ風市という天才集団に対抗するにはこちらも幾人かは天才が必要だ。芝原君はこの歳にしてその天才たちをまとめている我が平穏人生の会期待のホープなのさ!」
麗「嘘よ・・・芝原先生は前にあたしを助けてくれたことあったじゃない!!!」
葵「生泉、前に助けてくれたなんて思ってんならそいつは誤解だな。私は私のしたいことをしただけだ!」
芝原先生はそう言うと、瓶の中から自分が作った生物を出す。それはスライムのような粘液の生物だった。そして、つかまっている愛麗に向かってこういった。
葵「今からこいつを使ってお前の服・・・だけじゃなくて身体も命も全部溶かしてやるよ。生泉、今から言うのは私の本音だ。正直私の作った理科のテストで高得点をたたき出すお前が前から鬱陶しかったんだよ。」
麗「そんなこと思ってたなんて・・・」
葵「さ、死ぬ覚悟はできたかな。まあできてなくてもお前の命はここで終わりだ!やれスライム1号!」
芝原先生の命令で彼女が先ほど出した生物、スライム1号がつかまった愛麗に向かって粘液を飛ばす。
麗「嫌ぁ!!!」
凛「愛麗!!!」
愛麗に向かって粘液が発射されたその時・・・
和「これ使ってみるか・・・それ!」
和琴が何やら怪しい機械を操作して円盤状の弾を発射する。円盤状の弾は粘液に命中した後、高速回転で粘液を蒸発させた。
麗「うう・・・あれ?なんともない・・・」
葵「何が起こったんだ!?」
和「これのおかげね。念のため鷲宮から借りておいてよかったわ・・・」
凛「なんですかそれ・・・」
和「鷲宮の発明品高速弾丸円盤よ。このスイッチを押すと高速回転する円盤が発射されるの。回転の力であらゆる水分を蒸発させることができるわ。まあそれ以外にも用途はあるんだけどね。
科学力的にいえばあいつや芝原先生よりも鷲宮の方が科学力は上手だったみたいね。」
葵「鷲宮・・・学園長の孫か・・・」
嘉「証拠写真はやり取りしている間に納めさせてもろたわ。これであんたらも終わりやな!」
父「それってどういうことだよ・・・」
凛「あなたたちは警察行ということです!今助けますからね愛麗!」
凛世は芝原先生と愛麗の父親が動揺しているすきに、愛麗の拘束を解き助け出した。」
凛「生泉さん大丈夫ですか?怪我はありませんか?」
麗「ありがと凛世・・・嘉月に和琴も・・・今は早く帰って眠りたいな・・・」
父「くくく・・・はっはっは!面白れえな!それじゃ、警察が来る前に逃げるとするかな。さらばだ!!!」
愛麗の父親はあらかじめ用意していた車に乗り込むと高スピードで出口を目指して突っ切って行った。
和「逃げられたか・・・それなら芝原先生だけでも・・・」
嘉「和琴ちゃん大変や!芝原先生どこにもおらへんよ!」
和「あの教師いつの間に逃げたのよ・・・」
凛「生泉さんが無事だったんですからよかったじゃないですか。さ、早く帰りましょう。」
嘉「せや、それに証拠写真はしっかり収めたからこれを警察に出せばそのうち見つかるやろ。」
麗「3人とも・・・ありがとね。」
その後、愛麗たちは無事にアパートまで戻ることができた。自分の生物学上の父親に呼び出されて捕まったこと、共犯が自分たちの通っている学校の教師であること、父親に盗撮された写真をばらすと脅されてつい頭に血が上ってしまったこと、誰にも相談せずに父親の元に乗り込んでしまったことなどを警察に話した。その後警察の懸命な捜査により、芝原先生は逮捕された。しかし、愛麗の父親に関しては行方不明のままである。芝原先生は「恩師である愛麗の父親が研究をたくさんさせてくれることを引き換えに協力した。」と発言したらしい。しかし、事件はこれだけでは終わらなかったのだ。

芝原先生が逮捕されてから数日後のこと。愛麗たちは水晶学園の学食で雑談をしていた。
麗「はあ・・・一時はどうなるかと思った・・・」
凛「愛麗が無事だったからよかったじゃないですか。」
和「そうね。そう言えば天宮城、神宿、苺瑠は何もしなかったわよね結局・・・」
奈「それはごめんなさいですわ・・・わたくしも愛麗さんのために何かできればよかったんですが・・・」
咲「それは私も同じだよ。らっちゃんの無事を祈るしかできなかった。」
姫「我だって同じなのだぁ・・・」
麗「いいよ。奈摘たちのその気持ちだけであたしは満足だから。」
嘉「写真も警察に提出したし、愛麗ちゃんのお父ちゃんがつかまるのも時間の問題やろな。」
愛麗たちがそんな雑談をしていると、近寄ってくる1人の人物がいた。
?「よぉ。1組のエリートさんたちよ。」
麗「え・・・なんであんたがここに・・・」
凛「あなたはいま刑務所にいるはずでは・・・」
愛麗たちが驚くのも無理はない。そこに立っていたのは芝原先生だったのだから。
葵「・・・司法取引をして減刑して出してもらったのさ。当然この水晶学園の連中にはばれちゃいない。教師生活も再開ってわけだ。」
和「まだ平穏人生の会には所属しているの・・・」
葵「当然だろ。あ、もしお前らが鮫川や蒲郡さんにこのことをしゃべったら・・・私の怪奇生物でお前らを一滴残らず溶かしてやるよ。まあそんなわけで・・・これからもヨロシクな。」
芝原先生はそう言うと去って行った。
麗「そんな・・・」
凛「司法取引で無罪にしてしまうなんて騎ノ風警察も甘い所がありますね・・・」
和「しばらくは黙っておいた方がよさそうね・・・」
こうして、水晶学園に新たな敵が増えてしまった。愛麗たちの学生生活はこれからどうなってしまうのだろうか・・・