ミュージシャンneonと作家marine

最近騎ノ風市ではある女性2人のミュージシャングループ「neomarine」が人気だった。
片方は有名作曲家でミュージシャンのneon。もう片方は有名作詞家で作家でもあるmarine。
2人は学生時代からそれぞれの得意な分野を生かして支えあっていた。
そんなNeonとmarineには公開されていない秘密があった。それは・・・あの男の娘であることだった。

ある日、騎ノ風市唯一の新幹線駅である白金青山駅に2人の女性が降り立った。
1人は黒髪ロングに帽子をかぶって眼鏡をかけており、雰囲気的にはサバサバした感じに見える。
もう1人は青みがかった白髪のウェーブヘアで水色のカチューシャをしており、雰囲気的には大人しそうな感じである。
?「久しぶりの騎ノ風市ね・・・あたしたちがいた時よりはだいぶ変わっちゃったけど。」
?「戻ってくるのは5年ぶりですか・・・」
?「ねえ、しばらくここに滞在するのよね?」
?「・・・そうなんじゃないんですか?」
?「やだな・・・この町には憎い思い出が多すぎるよ。」
?「とはいえ元凶のあの人は死んだじゃないですか。」
?「そうだけどさ。あたしに醜い名前を付けたのはちょっと許せないしね。」
?「まあいいです。早いところ私たちの滞在先に向かいましょう。滞在先である騎ノ風グランドホテルは随分遠くみたいですけどね。」
?「なんで?ここって騎ノ風市の中心部じゃないの?」
?「違いますね・・・ここは騎ノ風市のはずれの方ですね。ここから騎ノ風環状線で8駅先の騎ノ風駅まで行く形になりますね。」
?「もー!昔はこんなに複雑じゃなかったのにいいい!!!」
2人の女性は新幹線乗り場から環状線ホームに向かった。2人の女性の後をつけるなぞの男がいるのには全く気づかずに・・・

女性2人が白金青山駅に降り立ったのと同じころ。愛麗と凛世はレコードショップにいた。
麗「ねえ凛世。neomarineっていうアーティストコンビ知ってる?」
凛「ええ、耳にしたことはあります。なんとも美人女性2人による人気アーティストコンビだとか・・・」
麗「そうなのよ。それで2人が最近騎ノ風市に拠点を移すっていう噂があるのよ。」
凛「そうなんですか、アーティストなら都会で活動したほうがいいような気がしますけどねえ。」
麗「なんか2人の所属事務所が騎ノ風に支部を作るんだってさ。2人とも騎ノ風市の出身だからっていう理由で。」
凛「理由になっていないような気がしますけど・・・」
麗「まあそれはいいから。この機会ににもneomarineを知ってほしかったんだ。」
凛「そうだったんですね分かりました。愛麗がそこまでお勧めするアーティストですもの。私も興味が出たので今度借りてみますね。」
麗「凛世がそう言ってくれて嬉しいよ。それでこの後、地下秘密基地いってこのCD聞かない?」
凛「いいですよ。眞武さんの家に言って早速そのCDを聞きましょうか・・・」
その時だった。愛麗たちの目の前を女性2人が通り過ぎ、その後ろを怪しげな男が追い回していた。
3人は和琴の家である眞武書店の方に向かって走って行った。
麗「なんか助けたほうがよさそう。凛世、和琴に許可とって地下秘密基地の入り口を開けてて。」
凛「分かりました。」
愛麗たちは和琴の家である眞武書房に先回りし、地下書庫の入り口を開けて女性2人が来るのを待った。

その頃先ほどの女性2人は駅からずっと尾行していた男に追いかけまわされていた。
男は意外に足が速く、2人を追いかけまわしていた。
男「ねえ!君たちneomarineだよね!写真撮らせてくれないかな!?」
?「やっば、ばれちゃった・・・」
?「それよりどうするんですか・・・あの男をなんとかまかないと私の体力に限界が・・・」
?「万が一何かあったらあたしが真凛姉を抱えて走るしか・・・あら?あれは・・・」
黒髪の女性は前方の裏路地で女の子・・・愛麗がこっちへ来るよう指示しているのに気が付いた。
?「はぁ・・・はぁ・・・」
?「(真凛姉はもう走るの限界みたいね・・・それならかけてみよう!)真凛姉!」
真「なんですか禰恩・・・?」
禰「あの女の子が助かるよう誘導してくれるみたいだからそこの隙間に飛び込むわよ!」
禰恩と呼ばれた黒髪の女性は真凛と呼ばれた白髪の女性に愛麗たちが誘導してくれる場所に飛び込むよう指示する。
真「何馬鹿なこと言ってるんですか!あの子だって敵かもしれませんし・・・」
禰「今そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?あの子たちたぶん悪い子じゃない!お願いあたしを信じて!」
真「はぁ・・・わかりました!死ぬときは一緒です!」
禰恩と真凛は愛麗が指示にかけることにし、全力で眞武書房近くの裏路地に駆け込んだ。
2人は全力で飛び込んだこともあり、上手く男をまくことができた。
男「あれ・・・2人はどこに消えたんだ?」
怪訝な顔をした男はしばらく辺りを見回すと去って行った。

愛麗たちの手助けで地下書庫に逃げ込んだ禰恩と真凛は彼女たちの案内でしばらく地下書庫にとどまることにした。
麗「ここにいれば安心ですからね。」
凛「お2人が無事でよかったです。」
禰「助かったぁ・・・」
真「助けていただきありがとうございます。」
禰恩と真凛はあの後地下書庫に何とか滑り込み、愛麗たちの案内で地下書庫の中にいた。
禰「うん、ここには拠点を移すつもりでやってきたからね。」
真「まあその原因が事務所首になったからなんですけどね。」
和「まったく、急に地下倉庫あけてくれっていうから何事かと思ったわよ。っていうか先約がもう来てるんだけどね。」
階段を下り、談話室スペースとなっている広間に来ると、先約が3人いた。咲彩、苺瑠、陽姫だった。
咲「あれ、らっちゃんたちも来たの?」
陽「そっちの見慣れない二人は?なんでここにいるの?」
姫「どこかで見たことあるような気がするのだ・・・」
麗「ああ、この2人はそこで襲われてたのを助けて・・・」
姫「そうだ思い出したぞ!たしか・・・人気アーティストのneomarineの2人なのだ!」
禰「あーあばれちゃったわね。そうよ。あたしが作曲担当のneonよ。」
真「私は作詞担当のmarineです。」
麗「そうだったんですか!?貴方たちの曲素晴らしくていつも聞いてます!」
凛「愛麗今気づいたんですね。」
和「それで?有名アーティストコンビがなんでこんなところに来てるわけ?」
陽「和琴ちゃんそんなきつい聞き方だめだよぅ・・・」
禰「まあ貴方たちは命の恩人だし話してもいいわ。あたしらこの町にある芸能事務所に移籍することになったのよ。」
真「その手続きのために騎ノ風グランドホテルに向かっていたのですが途中でストーカー男に追いかけられまして。」
和「芸能人はそういう所大変よね。その気持ちわからないでもないわ。」
禰「あら、あなたも芸能活動の経験あるの?」
和「昔モデルとしてちょっと活動してたことがあるのよね・・・地元雑誌のだけど。」
禰「地元雑誌ってことはローカルアイドルか・・・そっちもいろいろ大変なのね。」
咲「お2人は昔からの友人だったりするんですか?」
真「違います。姉妹です。」
禰「真凛姉が姉であたしが妹よ。」
真「私は次女で、禰恩は八女です。」
陽「次女と八女ってことはぁ・・・他にも兄弟いるんだよねえ?」
真「まあそうなりますね。」
禰「うーん・・・ちょっと家庭事情は複雑で話しづらいんだけど・・・」
和「心配いらないわ。ここの話は外に聞こえないから自由に喋って大丈夫よ。」
禰「そうね・・・なら、百合ヶ丘光って知ってる?」
咲「ええ。確かファッションモデルさんですよね?」
禰「その通り。それであの子は本名千葉崎光であたしのねーさん。」
真「私にとっては妹ですね。光は四女なので。」
麗「あの、お二人の本名って千葉崎なんですか?」
真「ええ。千葉じゃないですからね。一応私のフルネームはこうです。」
真凛は渡された紙に千葉崎真凛と書いた。
麗「neonさんはどうやって書くんですか?」
禰「はぁ、あたしの字難しいからあんまり書きたくないのよね。」
禰恩は嫌そうに手持ちのタブレット端末の画面に千葉崎禰恩と書いた。
姫「うむ・・・これは書きにくい名前なのだ。漢字検定だと禰は準1級レベルだぞ・・・」
禰「あたしの名前親父につけられたのよ。なんでだと思う?あたしが生まれたその日に歌舞伎町の飲み屋に行って店のネオン街が輝いていたからだって・・・
それ知ったときはマジで死にたくなったわよ・・・」
咲「私たちの学校に千葉崎先生って人がいるんですけどお二人のお父さんですか?」
禰「それはないわね。父は何年か前に亡くなったもの。」
真「たぶん苗字が同じだけだと思いますよ。私たちの父・・・千葉崎零語は最悪の人間でしたし。」
姫「それってどういうことなのだ?」
禰「あたしたちが姉妹だってことは言ったわよね?実はそれに加えてあたしたち同い年の26歳なの。」
和「姉妹なのに同い年・・・ってことは!」
真「そうです。私たちは腹違いの姉妹なのです。ここまで行ってしまったのですからさらに詳しく言うと、私たちは年子の14姉妹です。」
凛「年子の14姉妹ってあり得るんですかね?」
禰「現に当事者のあたしたちがここにいるわけで。あたしたちの父、千葉崎零語は14人の女性と不倫して一人ずつ女の子を設けたの。」
真「父は最初のうちはそれぞれの母親のところを行き来していたみたいですが、後々疑われて不倫がばれたのです。
そして私たち14人は母親に捨てられて父の家で15人で生活をすることになったのです。」
咲「それって、子供を捨てた母親たちも悪いんじゃないんですか?」
禰「母さんたちもある意味犠牲者ではあるからね・・・そこは責められないのよ。正直ムカつきはしたけど。」
真「大学を卒業するまで全員で父親を罵倒して暮らしました。おかげで姉妹全員が成功者になることはできましたが、心は荒んでしまいました。」
禰「それ以降真凛姉とあたしは東京でルームシェアして暮らしていたのよ。だけど前の所属事務所・・・ディラン・ミュージックアーティスツが急に契約解除を申し出てきたの。」
真「自分を否定されるのが嫌いな禰恩は怒ってしまって、ある人物のつてを頼って騎ノ風市に戻ってきたのです。」
姫「ずいぶん壮絶な人生を送ってきたのだなぁ・・・」
咲「それで、つてがある人物って誰なんですか?」
禰「セラフィ・ローランドこと本名千葉崎セラフィ。あたしたちの末妹で映画監督なの。」
凛「セラフィ監督の映画は見たことありますが面白みがありますよね。私結構好きですよ。」
麗「なんか将来を期待されている若手監督なんだってね。」
真「わが妹ながら素晴らしい実績を持ってるんですよ。そのセラフィに聞いたら騎ノ風市だけど私たち受け入れるぐらいの広さはあるからどうかと勧められまして・・・」
和「それで、そのプロダクションってどこなの?」
禰「西園寺プロダクションよ。昔は個人事務所だったみたいだけど、今は何人か人を受け入れているみたい。」
陽「あっ!そこわたしの親の事務所だよぉ。」
真「えっ・・・ソウナンデスカ?あわわ・・・あなたが社長の息女だったとは・・・」
陽「そんなにかしこまらなくても大丈夫だよぉ。真凛さんの方がわたしより年上なんだから。」
禰「それに社長はこの子の親でしょ?それで・・・西園寺プロダクションってどんな感じなの。変な事務所じゃないわよね。」
真「禰恩!社長息女様に失礼なこと言わないでください!」
陽「そんなにかしこまらなくてもいいってばぁ。西園寺プロダクションは元々はわたしの親の個人事務所なんだよ。
親が個人マネジメントを通じて大体経営の仕方もわかってきたとか言ってたし、セラフィさん以外にも何人か芸能人をとるって言ってたような・・・」
禰「それでディラン・ミュージックアーティスツを退社した人気アーティストのあたしたちにも声がかかったってわけか。」
真「今の時代どれだけ小規模な事務所であっても拾ってくれるのはありがたいです。禰恩は結構厄介な性格で人と対立しやすいんですよ。」
禰「まあそれは認めるわ。すべての原因はあたしに難読な名前付けた糞親父だけど!」
凛「禰恩さんの気持ちわかる気がします。私も名前変ですし・・・」
禰「分かってくれる?変な名前着けられると生きるのに苦労するのよね・・・あんたはなんていうのよ?」
凛「凛世です。」
禰「へえ・・・だけどあたしよりはましじゃない。凛世ならまだ書けるし。」
麗「なんか意気投合しちゃってるよと禰恩さん。」
陽「2人は似ているところがあるのかもねえ。」
真「あの子昨日まで騎ノ風に戻ることに不安を持っていたのですが・・・貴方たちのおかげで緊張がほぐれたみたいです。」
禰「真凛姉!騎ノ風っていい街になったわよね!だって見ず知らずのあたしたちを助けてくれたこんなに思いやりにあふれた子たちがいるんだもの!」
真「その通りだと思いますよ。まあ昔からそれなりに治安のいい場所だとは思ってましたが。」
禰「さすがにもう怪しい男もいなくなったわよね・・・そろそろ騎ノ風グランドホテルに行くことにするわ。」
真「ええ行きましょう、西園寺プロダクションの社長さんも心配しているかもしれませんし。」
禰「今日は助けてくれてありがとう。あなたたちがいなかったらあたしたち今頃どうなっていたか・・・」
真「あ、それと・・・陽姫さんでしたっけ?」
陽「はい?どうかしたんですかぁ?」
真「不束者ですがneomarineをぜひごひいきに・・・」
陽「そ、そんなにかしこまらなくも大丈夫だよぉ・・・わたしが社長ってわけじゃないんだしぃ・・・」
禰「もう、真凛姉はそういう所昔から変わってないんだから・・・」
真「いろいろとありがとうございました。」
禰「あ。それと・・・あたしが作曲に行き詰ったりしたらここにまた来てもいいかしら?なんだかここの雰囲気気に入っちゃって・・・」
和「ええ、構わないわ。今ここにいる6人以外にも出入りしているから驚くかもだけど・・・」
禰「他にもここに出入りしている子がいるんだ・・・友達多いって素敵よね。それじゃ、また来るわね!」
禰恩と真凛はそういうと地下秘密基地から去って行った。また来るという再開の言葉を残して・・・
真凛と禰恩はその後騎ノ風グランドホテルへ行きつくことができ、無事に西園寺プロダクションと契約し、所属アーティストとなった。
活動も順調で愛麗たちと出会った後、1か月足らずで新曲を書きあげてCDを発売させるほどの勢いがあった。
neomarineは騎ノ風市を拠点とするアーティストとして新たなスタートを切ったのだった・・・