嘉月の家の写真スタジオで嘉月が写真撮影を行っていた。なんでも、風景写真ばかり撮影しているのでたまには人物写真も練習したいからなんだとか。
嘉「いやーやっぱかわええなぁ!」
柚「・・・ここに来るまでこんな格好させられるとは思わなかったけどね。」
撮影の被写体ことモデルは柚歌。だけど今日は様子がおかしい。なぜなら普段とは違う格好をしているからである。
というのも普段絶対着ないようなブラウスとスカートを着用している。特徴のお団子頭も下ろしているので落ち着かない様子だ。
嘉「たまにはええやん。柚歌ちゃんも可愛い格好好きなんやろ?」
柚「確かにそうだけどさ・・・落ち着かないんだよこういうの・・・」
嘉「写真撮り終わるまででええから。次は右からの視線ちょうだいな。」
柚「はは・・・張り切ってるね。」
嘉「ウチは今まで風景写真ばかり撮影してきたんや。だからたまには人物写真も撮りたいねん。今は道行く人たちに撮影許可を貰おうとしても変質者扱いされることも多くて色々大変やからな。」
柚「だから友人であるボクに頼んだんだね。だけど可愛い服着せるならもっと適している人がいると思うんだけど・・・苺瑠ちゃんとか。」
嘉「せやけど、ウチは唯ちゃん着飾れば可愛くもなれるって思うたんや。それは今目の前にいる唯ちゃんを見て正解やったと思うたで。」
柚「そうなんだ・・・そう言われるとなんか嬉しいかも。」
嘉月は柚歌を褒めながらカメラのシャッターを切り続ける。そして50回ほど撮影したところでカメラを顔から離した。
嘉「終わったわ。お疲れさん。」
柚「写真のモデルも絵と同じぐらい疲れるんだね・・・」
嘉「そうなん?ウチは絵のモデルの経験はないからよう分からへんけど。」
柚「絵は絵で描いている人が描き終わるまでポーズをとり続けなきゃいけないから大変だよ。特に立った状態で物を持ったりするとね。」
嘉「確かにあれは辛そうやな。持っている手すら動かせへんやろうし。そう考えてみると写真は一瞬で撮った映像をデータ化してくれるからそれに比べれば楽やな。」
柚「中にはデッサンを2~3時間ぐらいかけて描く人もいるから。モデル側は同じ姿勢を維持していないといけないからね・・・それと、撮影はもう終わった?」
嘉「うん、十分やありがとさん。うーん・・・かわええなぁ。」
嘉月は撮影した柚歌の写真を眺めながら満足そうな表情を浮かべる。
柚「あのさ・・・そろそろ着替えていいかな?」
嘉「落ち着かへんよね。もうええよ。」
柚「じゃあちょっと着替えてくるよ。そしたら帰るから。嘉月ちゃんも写真の編集とかいろいろするでしょ。」
嘉「いやちょっと待って。ウチのわがままに付き合わせたんや。この後お礼ぐらいさせてな。」
柚「ありがとう。そう言ってくれるなら嘉月ちゃんの言葉に甘えちゃおうかな。すぐ着替えてくるから待ってて。」
柚歌はそういうと着替えに奥の部屋に入って行った。
10分後。嘉月と柚歌は騎ノ風市の市街地にいた。
柚「写真のモデルをしただけで美味しいものおごってもらえるなんていいよね。」
嘉「せやな・・・外に出かけてるのに髪そんな雑な纏め方でええん?」
柚歌は髪をお団子に戻さず珍しくポニーテールに結っている。
柚「いいよ別に。お団子に結うのは器用なボクでも大変だからさ。」
嘉「そうなんやね・・・あ、お店に着いたで。」
嘉月が案内したそのお店はケーキ中心のスイーツの専門店だった。
嘉「ここ愛麗ちゃんたちとたまに来るんやけど美味しいんやで。あ・・・唯ちゃん好きやったよねスイーツ。」
柚「うん、食べるよ。」
嘉「良かったわぁ。ウチあんまり大阪グルメ以外の知識あらへんから好物があってたか心配やったんや。」
柚「セロリ以外なら何でも食べられるからそんなに心配しないでよ(本当の好物はグラタンだけどね)。それとスイーツ苦手なのはボクたちの中だと環輝ちゃんぐらいじゃないかな。」
嘉「環輝ちゃんは甘いもんだめやもんな。早速入ろか。」
2人は店の中に入り、店員に席に案内してもらった。
嘉「なに頼むん?なんでもええんやで。」
柚「そうだな・・・このチーズケーキとラムネドリンクにしようかな。」
嘉「ウチはベリーケーキとアイスティーにするわ。すいませーん!」
嘉月は注文を店員に伝え、柚歌と話をしながらスイーツの到着を待つことにした。
嘉「唯ちゃんはどれぐらいの頻度でスイーツ食べるん?」
柚「ボクにとっては甘い物ってそこまで必須じゃないから、月に3回ぐらいだね。」
嘉「意外と少ないんやな。ウチもたこ焼きとかの方が好きやからこうやって誰かと一緒に行かない限り食べへんけどね。」
柚「大阪の味が懐かしかったりするの?」
嘉「そこは微妙なんやけどね。ウチも大阪は元々監禁されていた時期に住んでただけやからそんなに影響はないと思ってたんやけど・・・
身体や無意識が大阪にいたことを覚えてたんやと思うで。そのおかげで今はたこ焼きが好物になってもうたんや。」
柚「住んでた地域で好物が決まるのって珍しいね。大半は自分で食べて一番おいしかったものが好物になると思うけど。」
嘉「ウチもよう分からへん。大阪にいた当時はたこ焼きを口にしたのって1回ぐらいやったけどなぁ。」
柚「1回でも食べたことがあるなら、それは嘉月ちゃんが頭でたこ焼きの美味しさを覚えていたんじゃないかな。本当に美味しいって思ったものって中々忘れないものだよ?」
嘉「そんなもんなんかなぁ?・・・唯ちゃんは何が好きなん?スイーツちゃうやろ?」
柚「ボクはグラタンやポットパイみたいなホワイトソースを使った料理が好きかな。あの温かさがたまらなく好きなんだよね。」
嘉「冬に食べると熱々で美味しいわなぁ。夏だと逆に暑そうやけど。」
柚「ボクは夏でもたまに食べるけどね。冷やしグラタンとか出ないかな・・・」
嘉「ホワイトソースの料理で冷たい物って見たことあらへんから難しいかもしれへんなぁ。」
店「お待たせいたしました。ラムネドリンクとアイスティー、ベリーケーキとチーズケーキになります。」
ちょうどその時、店員が2人が注文した飲み物とスイーツを持ってきた。
店「ご注文は異常でお揃いでしょうか?」
嘉「うん、これで全部そろってるで。」
店「ではごゆっくりどうぞ・・・」
店員はそう言ってテーブルから離れていった。
柚「いただきまーす・・・うん、おいしいよこのケーキ。」
嘉「気に入ってくれてよかったわぁ。」
柚「飲み物もデザインが凝っていていいね。ボクはやらないけど多くの人がインスタグラムに写真載せてそうだよね。
そう言えば嘉月ちゃんはインスタグラムやってたりするの?」
嘉「ウチはもっと専門的な写真投稿サイトをたまに使こうてる程度やからインスタグラムはやらへんなぁ・・・写真にもいろいろ種類があんねん。」
柚「確かに嘉月ちゃんの写真はSNSに乗せる程度じゃもったいないぐらい綺愛麗だもんね。」
嘉「ふふ・・・褒めても何もでえへんよ?あ、そうや。これ食べ終わったら渡したいもんがあんねん。」
柚「渡したいもの?なんだろうそれ・・・?」
ケーキを食べ終え、店から出ると嘉月はバッグから一枚の写真を取り出した。
嘉「これ、今日のもう一つのお礼やで。」
嘉月はそういうと柚歌にその写真を渡す。
柚「これさっき撮ったボクの写真だよね?」
嘉「ウチが今日一番よく取れたと思った奴を唯ちゃんが着替えしている間に印刷したんや。今日の記念にってことで。」
柚「こんなにきれいな写真貰っちゃっていいの・・・?」
嘉「かまへんよ。ウチのパソコンにデータが全部入っとるし。最近はほんまに便利になったわぁ。データさえあれば何枚も写真印刷できるから。」
柚「大事にするよありがとう。」
嘉「唯ちゃんが嬉しそうでよかったわ。ウチもなんか嬉しいわ。」
昔は大型のカメラでしか撮影できなかった写真は今ではデータ化しスマホで簡単に撮影することができる身近なものとなった。今現在多く撮影されているSNS映えする写真ばかりではなくたまにはこのような友人を思って撮影した写真を撮影してプレゼントし、普段は言えないような思いを伝えるのも面白いかもしれない。