ある日の普通科目の道徳の時間。1組を担当している鮫川先生はいつもとは違う進め方で授業を行っていた。ちなみに、水晶学園でも道徳の時間は必修科目となっており、担任が受け持つことになっており、他のクラスでも同じ授業が行われていた。
鮫「今日は前回出した課題の発表をしよう。皆は自分の名前って気になったことはあるか?名前は一部の物を除いてしっかりとした由来があるんだ。前回の授業で出した自分の名前の由来を発表してもらおうかな。」
麗「はぁ・・・やっぱりこの日が来ちゃったか。休めばよかった。」
鮫「どうしたんだ愛麗。由来が聞けなかったのか?」
凛「愛麗はお母様と仲があまり・・・私の母も昏睡状態ですし、父にも聞きづらいので叔父に聞きましたが。」
愛麗だけではなくクラスのほとんどは浮かない顔をしていた。
鮫「(そういえば、このクラスは親はいても仲が悪かったりすることも多かったな・・・どうするか・・・)」
一部のメンバーの家族中の悪さもあって、発表をしづらい雰囲気が出来上がってしまった。しかし、そこで声を上げる者がいた。奈摘である。
奈「・・・このクラスの出席番号1番はわたくしですわよね?」
鮫「奈摘・・・そうだが。」
奈「それならわたくしから発表をやりますわ。わたくしはお父様との仲は悪くありません。わたくしが先陣を切って発表を行い、皆さんが発表しやすい環境を整えますわ。それでいかがでしょう。」
麗「どうする?」
和「天宮城がそういうんならいいんじゃないの。あたしたちは発表しやすくなればそれでいいし。」
奈「ありがとうございます。では、わたくしが発表させてもらいますわね。」
奈摘はそういうと、ホワイトボードの前に立ち、自分の名前を書いた。
奈「わたくしの名前は奈摘です。皆さんも一見キラキラネームじゃないかと誤解したのではないでしょうか?」
咲「確かに、奈月とか奈々は良く聞くけど、奈摘ってあまり聞かないよね?」
奈「わたくしの奈という漢字にはまっすぐに自分を持って進んでほしいという意味があるそうです。そしてもう一つの夢。夢と言えば将来の夢などがありますわよね。現にわたくしは幼少期から漫画を描き続けて今では季刊誌ではあるものの商業誌に乗せてもらうまでになってますわ。とはいえ、漫画を描かせていただいている以上夢はすでに現実になっているようにも感じるのですけどね。」
華「せやな・・・夢だったことが叶うとそれって現実になったって思ってまうよなぁ・・・」
奈「以上のことをまとめると、わたくしの名前の由来は夢を持ってまっすぐに進んでほしいからという理由でつけたそうです。では、これでわたくしの発表を終わります。」
奈摘が発表を終えると同時に全員から拍手が起こった。
鮫「ありがとう奈摘。皆の中には発表しづらい、大した由来がないということもあるかもしれない。そういう時は由来がないと言ったってかまわないんだ。それをここにいる全員はあざ笑ったりしない。それは皆がよく分かっているんじゃないか?」
麗「・・・そうだね。あたしたち何思ってたんだろ。」
凛「聞いたことをそのまま言えばいいんですよね。たとえそれがどのようなものであれ・・・」
鮫「次は柚歌。出席番号2番だけど、行けるか?無理なら次に回すが。」
柚「いいですよ。ボクも家族仲は悪くない方ですし。」
柚歌はそういうとホワイトボード前に出て、自分の名前を書いて説明を始めた。
柚「ボクの字は由と寧で構成されて柚歌なんだけど、まず由に関しては頼りがいのある人になってほしいって意味を使ってつけられることが多いんだってさ。だけどボクの場合父さんが唯の字で出生届を出そうとしたんだけど間違えちゃったらしいんだ。唯の字はかけがえのないっていう意味でつかわれることが多いらしいよ。家では娘がボク一人だから唯一の女の子って意味も含めたんだろうね。」
陽「あれ?ゆーちゃんにはお姉さんいなかったっけ?」
柚「この話を父さんにした時に暁子姉は自分に似てて男勝りだし息子とほぼ変わらないって言ってたんだ・・・ボクも結構男寄りのはずなんだけどね。」
陽「なんだか聞いちゃいけないこと聞いちゃったねごめん・・・」
柚「別にいいよ。次にあまり知られていない寧の意味はやすらか、穏やかであることって意味があるんだ。本来の読みは寧(ねい)だけど、女の子の名前として用いる時はいの部分を切り捨てて使われるよ。寧音って名前の子とかいるよね。」
和「読みを切るのって一般的に悪いって言われているけど、色部はその辺どう思ってんの?」
柚「人名とそれ以外での漢字の使い方って違うものだと思っているし、違ってもいいとボクは思うよ。さすがにありえない読み方を充てるはダメだと思うけど。まとめるとボクの名前の由来はかけがえのない貴方が穏やかに生きていけますようにっていう意味になるね。これでボクの発表を終わります。」
拍手と共に柚歌は自分の席に戻る。
鮫「次は・・・水萌。大丈夫か。」
水「ああ、次アタシか。しゃーねーな簡単に終わらすか。」
水萌はホワイトボードに名前を簡単に書いた。
水「アタシの名前は初対面じゃ読めない奴がほとんどだと思う。改めて説明すると水に萌でみなもだ。たぶん本当は水面ってつけたかったんだろうけどな。さっき柚歌が切り読みについて話していたけど、アタシの場合はみずをみなって読むのは問題ないと思ってるけど、もえをもって読んでいるからもの方が切り字なんだよ。これって厄介だなってアタシ自身は思う。」
苺「そうだな、我もそうだが読みにくい名前っていうのは説明が必要になるからやっかいなのだ。」
水「んで、親父から聞いた話によると、水と萌は清らかでかわいい雰囲気だから無理や組み合わせてつけたとのことだ。つまり由来はそんなもんだ。以上。」
水萌は話を切り上げるとそうそうと席に戻って行った。
水「はぁ・・・虚しいな・・・」
鮫「ありがとう水萌。最後まで立派に発表したお前を私は評価する。次は咲彩、大丈夫か。」
咲「はい。みなちゃんが堂々と発表して発表しやすい場を設けてくれたんですから、私も発表します。」
咲彩はそう言って前に出てきた。
水「アタシは別になにもしてねえけどな・・・」
咲「私の名前は咲彩でさあやです。私の名前を見て改めて変だなって思う人もいると思う。だけど由来はしっかりとあるんだよ。冴には研ぎ澄まされた、冴えわたるっていう意味があって、絢の字には美しい、きらびやかっていう意味があるの。」
陽「さあちゃんは名前の通り頭もいいし綺愛麗だからすごくあってる名前だよねえ。」
咲「そう言われると嬉しいかな。これらのことをまとめると私の名前の由来は知識に優れた美しい娘に育ってほしいって意味があったということだよ。これで私の発表は終わります。」
鮫「ありがとう咲彩。次は・・・陽姫だな。行けるか?」
陽「はーい。分かりましたぁ。」
陽姫は元気よく返事をすると前に出て名前を書いた。
陽「わたしの名前は陽姫。まず陽の字は日差しの当たる場所って意味や周りを明るく照らすっていう意味があって、歌の字には明るく朗らかに育ってほしいっていう意味が込められているんだって。」
柚「陽姫ちゃんには明るさや朗らかさはもちろん癒し的な雰囲気もあるよね。」
環「そうだね。ハルの近くにいると落ち着くし、名前と気質が凄くあってると思うし。」
陽「ありがとう。少し話がずれちゃうけれど私にはお姉ちゃん1人と妹が3人いるんだけど、それぞれの季節から名前がとられているんだよ。萌夏、秋華、冬花、季子って感じでね。わたしが陽姫で春担当なんだよぉ。」
苺「うむ、何かのテーマでそろえると統一感があって綺愛麗にそろうな。」
陽「うん、だけどこれ以上は特に何もないし、これでわたしの名前の由来のお話はこれで終わりにするよ。」
陽姫は話をきれいにまとめると自分の席に戻って行った。
鮫「素敵な名前の由来をありがとう陽姫。次は・・・苺瑠。大丈夫か?」
苺「ああ、我の由来は簡潔だからすぐ終わるよ。」
苺瑠はそういうと前に出て自分の名前を書くと説明し始める。
苺「我の名前は苺瑠。なんでこんなキラキラな名前をしているのかというと・・・我の出生に関係しているのだ。」
凛「なんだか深刻そうなお話ですね・・・」
苺「そこまで闇はないから心配するな。知らない人もいると思うので改めて説明すると我は5つ子なのだ。」
咲「そういえばいっちゃんが昔そんな話をしたことがあったね。」
苺「我の把握している範囲の事でしかないが、5つ子のような双生児以上の場合だと陽姫君の姉妹たちのように子供に統一感のある名前を着ける傾向が多いのだ。一郎とか二郎とかな。それで我の両親は我らが5つ子であることを知ってからこの5つの名前を考えた。」
苺瑠はホワイトボードに苺瑠(一)、新菜(二)、美愛(三)、四葉(四)、逸巳(五)と書いた。
苺「見てもらえれば分かるがこれらの名前は数字を含んでいる。これらの名前を順番に我と姉たちに割り振ったというわけさ。」
華「この法則で行くと、苺瑠ちゃんは長女なん?」
苺「いや、我は末っ子なのだ。第五子だな。」
和「それならなんであんたが長女の名前を貰っているのよ?」
苺「そこだが、昔の多胎児の出生順の決め方を説明しなければならないのだ。昔は最初に取りだされた胎児が弟妹だとされていてな。我は一番最後に取りだされていて本来だったら第5子で逸巳という名前になるはずだったのだが、立屋敷家でも5つ子の出生なんて初めてだったから祖父母と両親が過去の文献で先に生まれたほうが妹だというのを見たらしくて・・・最後に取りだされた我が長女扱いされて苺瑠という名前をつけられることになったのだよ。出生届を出した後に現代での正しい順番に気づいたらしいがな。」
奈「大変でしたのね・・・」
苺「そんなに悩むほどの事でもないさ。我は苺瑠って名前は好きだぞ。苺は美味しいしな。それじゃ、これで我の発表は終わることにするよ。」
凛「(ですが確か苺の漢字の由来って女性の胸のような実が成るからだったはず・・・立屋敷さんはそれに気づいているのでしょうか・・・)」
鮫「ありがとう苺瑠。さて、次は愛麗。お前の番だがどうするんだ。」
麗「ここまで来たからにはやるわよ。」
愛麗は重そうな腰を上げてホワイトボードの前に立ち、名前を書いて説明を始める。
麗「あたしの名前は愛麗。女を象徴するのにふさわしいきらびやかなイメージのある漢字だと思うけどすごく書きづらいっていう欠点もあるわ。」
凛「分かります。愛麗ってお高い感じのイメージがあって、書きづらさがありますよね。」
麗「昔は書くのに苦労したわ。次に由来だけど、人を和ませられる大らかな子に育ってほしいって意味があったんだって。その辺はすっかり名前負けしてるけどね。」
凛「名前負けなんてしていないです。愛麗はとても優しい、素敵な女性ですよ。」
麗「ありがと凛世。そう思ってくれているだけで嬉しいわよ。じゃ、これであたしの発表は終わりにするから。」
愛麗は発表を切り上げ席に戻って行った。
鮫「ありがとう愛麗。次は、環輝だがどうする?」
環「そーだね、いいよ。アンも発表できそうな気がしてきたし。」
環輝は席を立つと、ホワイトボードに自分の名前を書いて説明を始める。
環「アンの名前は環輝でだよ。皆もこの字はキューバの漢字表記の玖馬以外では見慣れないなって思うかもしれないけれど、黒光りした玉のように美しいっていう意味があるんだよ。だけどそれに美しいの意味を持つ美を重ねちゃってるからほんと馬鹿だよね。」
奈「玖の字が美しいということを表す字であるのなら確かに重なってしまいますわよね。」
環「アン全然美しくないのにね。美しいに美しいを重ねた名前だから説明に困っちゃうし。」
水「そんなことはないんじゃないのか。得意なことを楽しそうに研究したり、バイオリンを弾くお前は輝いていると思うぞ。」
環「そ、そんなことないし・・・ああもう、水萌が変なこと言うから調子狂った。アンの発表はこれでおしまいね。それじゃ!」
鮫「ありがとう。私は美しいに美しいを重ねてもそれは環輝の立派な名前だと思うがな。次は・・・和琴だけど大丈夫か?」
和「そうね。ここまで来たら怖いもんなんてないし、さらっとやるか。」
和琴は前に進み出ると自分の名前を書いて説明を始める。
和「あたしは和琴。こういう名前の響きだと真琴や美琴を連想する人も多いだろうけど、それらとはまた違った意味になるわ。琴の字には琴の弦のように芯のある人になってほしいって意味があるらしいわね。次に和だけど・・・柔らかい、協調性のある人になってほしいって意味があるのよ。ま、あたしは自分の意見も言わずに和を保つみたいな奴になるのはごめんだけどね!」
麗「こうやって見ると和琴の名前って複雑なのね。自分の考えを大切にしつつ、協調性のある人になってほしいっていう意味があるわけだから。そんな二枚舌みたいな生き方できる人っているのかしらね?」
和「あたしはいるけどそれができるのは長いものにまかれる奴だと思っているわね。どちらかと言えば毒舌とか言われたとしても琴の意味の方を大切にしたいわね。心理学でも学んだけど芯を持ってるやつはもってない奴に比べたら立派だと思うから。それにこの名前考えたのおばーちゃんだからね。この由来を聞いた時琴はともかく和にそんな深い意味があるなんて知らなかった、和は私が好きな字だから着けたんだ悪いことしちまったねえって言ってたし。」
環「漢字の意味を知らなくて意味が重なったり食い違うことって多い気がするし。」
和「そうね。名付けをする人は感じの意味をしっかり調べて、大人になって感じの意味を知る時ショックを受けない組み合わせにするのが一番だと思うわよ。じゃ、これであたしの発表は終わりね。」
和琴はそういうと、自分の席に戻って行った。
鮫「ありがとう和琴。私はお前なら和と芯を両立した存在になれそうな気もするが、強要は良くないな。次は・・・凛世だな。頼む。」
莉「はい。分かりました。」
梨音は前に出て、自分の名前を書き説明を始める。
凛「私の名前は凛世と書きましてりんぜです。昔は名乗るのがとても嫌だった名前です。」
和「確かに一昔前はキラキラっぽい感じで扱われてたし、今でもらいおんみたいにおんの付く名前のキラキラって多いわよね。」
奈「りんぜをローマ字で書くとRionですから、読み方を誤るとらいおんとも読めてしまいますわね・・・」
麗「だけどあたしは好き。読みはあれかもしれないけれど凛世は美人だから名前負けも感じないから。」
リ「そこまでおだてなくても愛麗の方が可愛いですから・・・それとどうせならりおで切ってほしかったという思いもありました。ですが、話を聞いた時おんの読みの部分は生後数日の私に音楽の才能が見られたからという理由でつけられたそうです。私がまだ赤子だった時、激しく流れるJPOP音楽に興味を示したらしくて。大半の子供はそんな時期に激しい音楽を聴いたら泣き出しますよね。だからこそおんの読みをつけて音楽に才能を生かせる子にしたかったんだそうです。ちなみにもう一つの鈴の字には純粋で綺愛麗な心を持った子に育って欲しいという意味があるそうでそこから選んだらしいです。それに鈴は使い方次第では楽器にもなります。こうやって名前の由来を見ると私が音楽家になることをすごく有望視されてますよね・・・」
奈「凛世さんの音楽って素敵ですものね。普段アニソンに触れるわたくしから見ても美しい音色に聞こえますもの。」
凛「ありがとうございます。キラキラネームのように見える名前でも由来がしっかり決まっていれば問題ないと思えるようになったのが良かったかなと思います。それでは、私の発表はこれで終わります。」
凛世は綺愛麗に発表を締めくくると自分の席に戻った。
鮫「漢字の意味も大事だが、その子の持つ力を大事にした名付けというのもいいのかもしれないな。それじゃ次は・・・嘉月だな。発表できるか?」
嘉「了解や。」
嘉月は静かにホワイトボードの前に出ると、自分の名前を書いて説明を始める。
嘉「ウチの名前は嘉月。今でこそこの字が選ばれたんやけど、元々は香月の字で名付けられるはずやったんや。」
環「なんか字を変更せざるを得ないほどの事情でもあったわけ?」
嘉「ウチが生まれる数週間前にいじめ自殺事件が起こってな、そのいじめをやった加害者が香月っちゅう名前やったんよ。」
咲「あれ?なんでかづちゃんのご両親はそのことが分かったの?」
嘉「その主犯の個人情報がネットの連中によって晒されてたんや。親はウチに香月とつけたら、この事件が将来いじめにあうって思ったんやろな。だけどかげつという読みの響きを気に入っていた両親は漢字だけ変更することにしたっちゅうわけや。」
エ「そういうのっていつ起こるか、分からないからこそ恐ろしい・・・」
水「悪いことした奴と同姓同名だとなぜかお前がこの犯罪やったんだろ反省しろみたいなことをネットに書かれて叩かれることもあるよな。辛いもんだぜ。」
苺「水萌君は珍しい名前だからそういうことはあまりないんじゃないかな・・・」
嘉「ウチの名前に選ばれたこの嘉の字は縁起の良さが重視されとんのや。つまり由来は他の候補には桂の字で桂月っていうんもあったらしいで。」
莉「ですが、縁起重視で字を選んだのが良かったのではないかと思います。それで今雷久保さんはとても穏やかで平和に過ごしていますよね。」
嘉「せやな。あの事件の事を言われることもないし・・・字の縁起の良さがいい方向に働いたんかもしれへんな。それじゃ、ウチの発表はこれで終わりにするで。」
嘉月はそう言うと、自分の席に戻って行った。
鮫「ありがとう嘉月。最後は・・・エレナ。
エ「あまり自信ない・・・けど、ここまでの皆の勇姿を見たからやる・・・」
エレナはおずおずと前に出てくると名前を書く前に説明を始める。
エ「私の・・・名前は・・・カタカナだと思っている人も多いけど・・・実はちゃんとした漢字表記がある・・・」
エレナはホワイトボードに「英怜菜」と書いた。
エ「ちなみにおじい様は・・・一切この名付けにかかわっていない・・・」
環「学園長がつけたんじゃないんだね。」
エ「この名前を付けたのは私の・・・親。」
環「そうなんだ・・・あ、だけどレナちゃんの両親って・・・」
エ「うん、失踪中だね・・・だから詳しい由来はわからない。だけどおじい様が少しだけ教えてくれた。それによれば、海外に行ったときに通用するようにみたいなことを言われたらしい・・・つまるところ私の名前の由来は、外国に行っても問題ないようにつけられたっていうのが答え。」
姫「そういう名前の付け方をされると嫌だよなぁ・・・」
エ「だけど、嫌なことばかりではない・・・漢字の名前よりも書きやすいっていうメリットもあるからテストの回答を始めやすいとかね。」
麗「事前に覚えることがただでさえ多いテストでそれは魅力的よね。あたしとか名前を書くだけで15秒ぐらいはもっていかれるから。」
柚「15秒で自分の名前をしっかり書ける愛麗ちゃんも十分すごいことやってるとボクは思うけど。」
奈「その辺は苗字との兼ね合わせもありますから。わたくしのように文字数が多いと15秒以上はかかってしまいますわ。」
エ「そのあたりはメリット・・・書きやすい名前というのはそういう時便利・・・これで言うことは全部言ったし、私の発表はこれでおしまい・・・ありがとうございました。」
普段あまり喋らないエレナはやや疲れた様子で自分の席に戻っていった。
鮫「ありがとうエレナ。日本人の名前は漢字のイメージを持たれやすいがカタカナやひらがなの名前だって素敵だと私は思う。最後だが・・・ラニーは発表できるか?」
ア「ワタシは・・・両親が忙しくて聞く時間も取れず、どれ調べても由来が分からなかったのデス。だから皆さんのように発表はできないデス・・・」
鮫「そうか・・・だけど恥じることはないぞラニー。調べようと全力を尽くしたということが大切だと私は思うからな。さて、これで全員の発表が終わったわけだが・・・みなそれぞれの名前の由来を聞いて何を感じた?」
麗「一見キラキラっぽいとか読みにくいとかあっても名前の由来はしっかりあるんだなってことが分かったわね。」
璃「はい。由来って様々な形があって素敵だと思いました。」
鮫「そうだな。たとえ一見キラキラっぽい名前であったとしても由来はしっかりあるのだから人の名前を馬鹿にするということは許されない行為だ。だがさ・・・キャラクターの名前を無理やり漢字にあてはめてつけたものだったり、騎士と書いてナイトと読むとかは私であっても擁護しきれないが。」
柚「それはもはや、名前ですらないよね・・・」
鮫「最後に今日のまとめをしておく。相手の名前を馬鹿にする前に由来を知って思いやりをもてるようになろう。私が伝えたかったのはこれなんだ。お前たちも自分の名前だけではなく相手の名前も大切に尊重してやるようにな。それでは今日の道徳の授業は以上だ。」
鮫川先生はそういうと授業を締めくくった。その教室には心なしか温かな雰囲気が出来上がっていたのだった・・・