音響マスター凛世

環「はぁ・・・家で使ってたヘッドフォン壊れちゃったし・・・」
花蜜環輝はというのも昨日の夜、急に長年愛用してたヘッドフォンから音が出なくなり壊れてしまったのであった。
環「音楽なら、凛世に聞いてみるのが一番いいし。さっそく聞いてみよっと。」
環輝は凛世の家である蕎麦屋に向かった。
環「凛世、今家いる?」
凛「花蜜さん。私の家に訪ねてくるなんて珍しいですね。どうかしましたか?」
環「凛世って音楽だけじゃなくて音響機器も詳しかったよね。首にヘッドフォンかけてるし。環輝の使ってたヘッドフォンが壊れちゃってさ・・・」
凛「壊れたということは私の愛用してるこれが欲しいのですか・・・これは大切なものなので嫌です。」
環「違うし!凛世なら詳しいだろうからいろいろ教えてほしいの!」
凛「そっちですか。分かりました今日は予定もありませんしお付き合いします。」
環「ありがとだー!凛世やっさしー!」
凛「それで、花蜜さんはどれぐらいの性能のヘッドフォンをお求めですか?」
環「性能?」
凛「音楽を聞くだけなのでしたら雑貨屋の粗末物でも問題ないですし、私のようなプロ仕様のものが欲しいのであれば、私がよく行っているお店に連れて行きますので。」
環「行きつけの方連れてって!そっちの方がよさそうなものありそうじゃん!」
凛「分かりました。値段もそこそこしますけどいいんですね?」
環「もちろんだよ!」
凛「では、早速向かいましょうか。」
環輝は凛世に連れられて、行きつけの家電量販店の音響機器コーナーにやって来た。
環「この家電量販店にこんなコーナーあったんだ。それに凄そうな音響機器がいっぱい・・・凛世はよくここに来るの?」
凛「はい。楽器のメンテナンスなどは楽器店でやっていますが、音響の設備などはこちらで購入しています。それで、どのようなものがいいですか。音質が良いものが欲しいとか、私が持っているようなコードレスのものが欲しいとか・・・」
環「ならメタリックレッドだっけ、そういうカラーの奴が欲しいよ。」
凛「メタリックレッド・・・それならこちらとかどうですか?」
凛世は展示してあるヘッドフォンのうちの1つを手に取り見せた。
凛「このヘッドフォンはお値段が1万円ほどですが、音質も良いですし、実際に使用している方からの評価も良いものなんですよ。そこにある見本で音質を確かめることもできますので聴いてみたらどうですか。」
環「わかった聞いてみる~。」
環輝は見本のヘッドホンを手に取り視聴用のプレイヤーにつなげて音を聞いてみた。
環「これすごくいいね。音楽の世界に入り込める感じが素敵だよ。」
凛「あとはこれとかもいいものですよ。コード有りになってしまいますが、そちらのワイヤレス型よりも値段は安くてなおかつ更に高音質なんです。」
環「そうなんだ。聞いてみるから見本貸してー。」
環輝は見本を凛世から受け取ると視聴用のプレイヤーにつなげて音を聞く。
環「おー・・・コードは邪魔だけどさっきのよりもいい音じゃん!」
凛「(花蜜さん楽しそうで何よりです。一緒に遊んだ昔を思い出しますね。)」
環「うーんと・・・よし、こっちのワイヤレスの奴にするし!」
凛「あら、他のは見なくてもいいんですか?まだ種類はたくさんありますけど。」
環「全種類見ていると日が暮れそうだし、やっぱりこの色、メタリックレッドがかっこよくていいから。」
凛「そうですか。それなら私は待ってますから会計してきてくださいね。」
環「おけー!」
環輝はヘッドフォンの箱を持ってレジに向かっていった。
凛「さて、私はこのあたりで待ってますかね。」
凛世は音響機器コーナーの入り口辺りの柱によりかかり、環輝を待つことに。そんな凛世に声をかけるものがいた。
嘉「あ、凛世ちゃん。ここに来てるなんて珍しいやん。買い物?」
凛「雷久保さんじゃないですか。花蜜さんに頼まれてこちらの音響機器コーナーで性能のいいヘッドホンを紹介していたんです。」
嘉「ウチは新しく発売したカメラを見にきたんやで。」
凛「雷久保さんってカメラ10台ぐらい持ってませんでしたっけ?」
嘉「せやけど、一台修理できないぐらいに壊れてもうてな・・・補充や。」
凛「他に9台もあるのに補充なんて相変わらずガチなんですね。」
嘉「そんなん言うたら凛世ちゃんやってパソコンに専用のキーボード繋いで作曲する音楽に夢中なガチやん。」
凛「そうですね・・・音楽に関して言えば私もそうなのだと思います。雷久保さんは音響コーナーにはあまり来ないのですか?」
嘉「ウチは音響機器とか音楽あんまり詳しくあらへんしな。」
2人で話をしていると会計を終えた環輝が勝ったヘッドフォンを持って戻ってきた。
環「凛世~!ヘッドフォン買ってきたよ早速使いたいんだけどどうすれ・・・お、嘉月がいるじゃん。家電見に来たの?」
嘉「今日はカメラやけどな。」
環「それで早速箱を開けて使ってみたいんだけど・・・どうやるの?」
凛「花蜜さんはヘッドフォンをご自宅でのみ使用するんでしたよね?それなら、家に帰ってから設定すればいいのでは?」
環「・・・よく考えたらそれもそうだし。よし、そろそろお昼だからご飯にしよっか。凛世にヘッドフォンの事色々教えてもらったから奢るよ。嘉月も良かったら一緒に行かない?」
嘉「ええの?ウチは今あっただけやのに・・・」
環「いいよそんなこと気にしなくて。それにが奢りたいから奢るの。」
凛「気前いいですね。」
環「それじゃ、レッツゴーだよ!」
環輝は凛世と嘉月を連れ、家電量販店の2階に併設されているレストラン街へ向かった。

環「それでどこの店がいい?」
凛「私はどこでもかまいませんよ。」
嘉「ウチも特に今食べたいものはあらへんかな。」
環「なら和食にしよっか。凛世和食好きだったよね?」
凛「はい。ですが花蜜さんはかなりの量をいつも食べますけど和食で足りるのですか?」
環「問題ないし。2人前頼めばいいじゃん!」
嘉「リッチな食べ方やなぁ・・・」
環「研究やってるとお金はあるからね。」
3人は和食店に入ると、席に通される。食事の注文を手早く済ませ、食事を待っている間雑談を始めた。
環「凛世っていつから音楽やってるんだっけ?」
凛「小さいころからやってますよ。ピアノ暦は12年ぐらいです。」
嘉「12年もやっとるってことはコンクールとかにも出たりしたん?」
凛「何度かありますよ。とはいえ優勝できるほどの実力はなかったのですがね。」
環「それでも今作曲っていう道につなげられたんだからすごいじゃん。」
凛「作曲はそれなりに思いつきでメロディーを奏でてそれを曲にしていることも多いんですけどね。好き勝手に演奏していたものが曲になったりするんです。」
嘉「思いつきで奏でた音を曲にできるんは天性の才能やな。ウチは音聞いても思いつきで曲を組み立てるなんてことできへんし。絶対音感って奴なんかな。」
環「音響機器とか楽器にも詳しいし、凛世は音楽の事なら何でもお任せな音響マスターって感じだよねほんと。」
凛「そんな・・・ですが音響マスターと言われて悪い気はしませんね。」
そんな話をしていると料理が運ばれてきた。1人前の食事をする凛世と嘉月はともかく、2人前の御膳を食べる環輝の姿は周囲にとってはありえない光景に見えたことだろう。

嘉「いやー美味やったなぁ。」
凛「落ち着いた雰囲気でとても良いお店でしたね。ご馳走様でした花蜜さん。」
環「喜んでくれたよかったよ(ちょっと高かったけど・・・)。」
3人が食べ終わって店を出た。すると前に見慣れた姿が。両手に色々なグッズを抱えた愛麗だった。
環「あれ、あの子愛麗じゃん!おーい愛麗~!」
麗「環輝に凛世に嘉月じゃない。あんたたちもここ来てたんだ。」
凛「愛麗はなぜここに?」
麗「今JKイレブンが騎ノ風市の商業施設と合同のコラボイベントやってんだけどあたしの好きな心美とコラボしているのがこの家電量販店だったの。」
愛麗はそう言うと購入した心美のグッズを見せた。キーホルダーやタオルなどすべてのグッズに様々な表情の心美が描かれている。
嘉「JKイレブンって騎ノ風とそんなに縁のある作品なん?」
麗「作品を描くときにモデルにした街が騎ノ風なんだってさ。作中には学園と試合する会場以外の描写がほとんどないから詳しくは分からないけど。」
凛「色部さんと天宮城さんとは一緒ではないのですか?JKイレブン関連のイベントは3人で行っているイメージがあったので・・・」
麗「柚歌は有沙推しだから駅中の画材店に行ってる。奈摘は星奈が好きって言ってたから北口前のアニメショップかな。コラボしている店がキャラごとに違うのよ。」
環「ねえ愛麗、この前JKイレブン少し見たんだけど銀髪のドライそうな子がいるじゃん。あの子気に入ったんだけどどこの店とコラボしてんの?」
麗「銀髪ってことは都亞かな。都亞は駅中のパソコンショップだったと思う。」
環「教えてくれてあんがと。帰りに寄ろうっと。」
麗「それで、あんたたちは何しにきてたの?」
凛「花蜜さんが愛用のヘッドフォンが壊れてしまったとのことでいろいろ紹介していたんです。」
環「凛世のおかげでいい性能のものが手に入ったよ。」
麗「そうなんだ。ならあのことは知らないのかな。」
環「あのことって何?」
麗「JKイレブンコラボの商品の中にキャラの特徴を催した商品が1種類ずつあるんだけど、都亞とのコラボ商品が「都亞のヘッドフォン」なのよ。ほら、あの子凛世みたいにヘッドフォン首にかけてるじゃん。あれをモデルにした商品なんだけどさ・・・」
環「なにそれ・・・めっちゃ欲しいんですけど。」
麗「特徴を催したグッズは人気だから早く行かないと無くなるよ。あたしもこれ・・・心美のグッズは飾り付きのカチューシャとダメージジーンズのセットなんだけどあたしが買う時には在庫がだいぶなくなってたんだ。」
環「こうしちゃいられないじゃん早く買いに行かなきゃ!凛世今日はありがと!嘉月もまた学校でね!!!」
環輝はそう言うと、一目散に駅ビルに向けて走って行った。
凛「花蜜さんってあんなに足早かったんですね・・・」
嘉「いや、たぶん欲しい物のために全力疾走するタイプなんやないの。」
麗「一種の火事場の馬鹿力なのかもしれないわね・・・3人で楽しくしてた時に水差しちゃったみたいでごめん。環輝があそこまでJKイレブン好きだったと思わなかったから・・・」
嘉「ええんやで。ウチらは好きなもんにのめりこむことを大切にする存在やろ。」
凛「そうです。それに愛麗と会えてうれしいです私。」
麗「そっか。2人ともこれから時間あるなら家でお茶しない?コラボグッズの中にこういうのもあったんだよね・・・」
愛麗はそう言うと心美イメージのお茶(特性ブレンド)と書かれた缶をみせた。
凛「どのような味がするかは分かりませんが・・・飲んでみる価値はあると思います。」
嘉「ウチも行こかな。カメラたくさん見すぎてずっと立ってて疲れてもうたから。」
麗「前に作り置きしていたお菓子もあるからお茶と一緒に食べよっか。」
凛「愛麗のお菓子いいですね。」
その後、凛世と嘉月は愛麗の家でお茶したのだった。なお、コラボ心美茶の味は・・・悪くはないが独特の味だったらしい。

一方駅中のパソコンショップに向かった環輝はというと・・・なんとか最後の一つを確保することに成功したようである。
環「最後の一つにぎりぎり間に合ってよかったし。だけど、ヘッドフォン2つもいらないじゃん。どうすればいいんだろ。そうだ!凛世におすすめしてもらった奴を使って都亞のヘッドフォンは保存用にしようっと!自分用と保存用って便利な言葉だし!」
言葉の意味は少し違う気もするが今日の環輝の表情はいつになく幸せそうだった。