水晶学園には都市伝説が存在している。動く石像、夜になると水音が響く何もない池・・・面白い物好きの和琴はそんな都市伝説の事を調べて回っている。
和「ねえ、あんたたち知ってる?」
咲「急に言われても何の事だかわからないよことちゃん。」
陽「そうだよぉ。私たち相手の意図を読み取れる特技なんか持ってないんだから。」
和「それもそうね。あたしが話したいのは本館の西側にあるロッカーの噂なんだけどさ。」
咲「ロッカーって生徒に貸し出している奴だよね?」
水晶学園はクラスが最大15人な上に基本教育と朝の連絡にしか使われていないためクラスには大きな荷物を置けるロッカーがない。そのため学園の一部にロッカールームが東側と西側の2か所に設置されており申請をした生徒に貸し出している。
和「そうよ。西側のロッカールームにある133番の誰も使っていないロッカーがあるんだけどその中に宝が眠っているらしいのよ。」
陽「胡散臭い話だねえ・・・」
和「だけど、もう一つ別の話があってそのロッカーの中に悪霊が住んでいるって話もあるのよ。だから・・・」
咲「つまりは霊感のある私にそのロッカーを見てほしいってことなのかな?」
和「話がわかってるじゃない神宿。」
咲「ことちゃんとは小5の時からの付き合いなんだからそれぐらいはわかるよ。いいよ、次の授業時間私は空きだから付き合うよ。」
和「ありがと助かるわ。この謎が判明すればいい感じになりそうね。」
咲「ことちゃんって新聞部とかじゃないのにほんとこういうの好きだよね・・・はるちゃんはどうする?」
陽「わたしは・・・わたしも次の時間空いているしさあちゃんたちに付いて行こうかな。」
咲「怖い悪霊とかいるかもしれないんだよ?ホラーとか苦手でしょ?」
陽「確かにそうだけどぉ・・・霊に強いさあちゃんがいてくれれば安全かなって思うんだ。」
咲「そう・・・それなら一緒に行こうか。だけど無理はしちゃダメだよ?怖かったらちゃんと言ってね?」
陽「もちろんだよっ。ことちゃん、早速お宝もしくは悪霊の隠れているロッカーに行こう?」
和「従姉妹同士仲良いのね。ロッカーはこっちよ。」
和琴は咲彩と陽姫の気が変わらないうちにロッカールームへ案内した。
和琴たちがロッカールームに着いた時には人は居なかった。
和「誰もいないわね・・・調べるのにはちょうどいいわ。」
咲「ロッカールームって普段来ないから新鮮だね。」
陽「わたしも申請すれば使えるのかなぁ?」
3人でロッカールームを見ていると、急に扉の開く音がして誰かが入ってきた。入ってきた人は3人がよく知っている人物・・・水萌だった。
水「・・・お前らそんなところで何やってんだよ。」
咲「みなちゃん。みなちゃんここのロッカー使ってたの?」
水「ああ。さっきまでスポーツ科目やってたからこれからシャワールーム行くんだ。アタシみたいなやつはここに着替えいれてるんだよ。それとここのロッカーはカードキー式だから、事務室で申請をしないと開けられないんだぜ。」
水萌はそう言いながら、借りていると思われる11のロッカーをカードキーで開けた。
陽「みなちゃんも頻繁にお風呂入るんだねえ。」
水「何言ってんだよ入るに決まってるだろ?」
陽「あんまり想像できないんだよねえ。みなちゃんが全裸で髪も解いてシャワー浴びてる姿・・・」
水「変な想像するな!」
和「そんなことより織田倉、あんたさ133番のロッカーの噂って知ってたりする?」
水「あの宝が入ってるだの悪霊が住みついているみたいな話か?アタシは信じらんねえな。まさか、咲彩をここに連れてきたのって・・・」
和「神宿なら幽霊が見えるから中に何か潜んでいないか調べてもらおうと思ってね。」
水「あんま危ないことさせんじゃねーぞ。咲彩はアタシの大切な・・・」
咲「大切な?」
和「全く・・・幼馴染同士仲良いですこと。」
水「うっせ!とにかく危ないと思ったらすぐにでも逃げろよな!」
水萌はそういうとロッカーから必要なものを取り出して去っていった。
咲「あ、みなちゃん・・・行っちゃった。」
和「ちょっとおちょくりすぎたかしら?」
陽「もう、からかいすぎは良くないよ。」
和「それでどうする。織田倉の話によればカードキーがないと開けられないのよねここのロッカー。」
咲「誰かが133番のロッカーを予約して開けるっていうのは?」
陽「そこの張り紙に生徒に貸し出されるロッカーは指定できませんって書いてあるよぉ。これじゃ無理じゃないかなぁ?」
和「しゃあないわね・・・神宿、133番のロッカーを扉越しに見てみて!」
咲「わかった。・・・・・・・霊がいる感じはしないけど。」
陽「扉を開けないと分からないのかもしれないね。」
和「どうしようかしら・・・」
?「・・・3人ともここで何しているの?」
またロッカールームに入ってきた人が・・・今度は柚歌だったようだ。
和「なんだ色部じゃない・・・」
柚「なんだって言われるとちょっとなぁ・・・何してたの?」
咲「ことちゃんに頼まれて都市伝説の調査の手伝いをしていたんだよ。」
柚「都市伝説かぁ。そういえばこのロッカールームにもあるんだってね。」
陽「ゆずちゃん、133番のロッカーって誰が借りているか知ってる?」
柚「133番?そう言えばレナちゃんが前に133って書かれたカードキーを持ってたような気がするけど・・・」
和「鷲宮が!?神宿、西園寺もすぐ行くわよ!」
咲「えっ、ちょっとことちゃん!」
陽「もっと詳しく話聞こうよぉ・・・」
和「時間は有限よ!早く行くのが一番だわ!」
柚「ちょっと、それがロッカーのカードキーだってことは分からないのに・・・いっちゃった。」
柚歌はロッカールームから出ていく和琴たちを見送ることしかできなかった。
3人はエレナのいるはずの物理準備室の前に来ていた。
和「鷲宮はここにいるはず。空き時間はよくここで発明をやってるって言ってたし・・・鷲宮!入るわよ?」
中には様々な機械の発明が置いてあった。奥ではエレナがいま新しく作っているのであろう発明の開発に取り組んでいた。
エ「3人とも急にどうしたの。わたしもうすぐ授業に行かないといけないんだけど・・・」
咲「ねえレナちゃん、学園西側のロッカールームにある133番のロッカーって借りてないかな?」
エ「133番のロッカー?借りてるけど・・・」
和「あたしたち133番のロッカーに宝が眠っているとか悪霊が住みついているとかいう話を聞いてそれを調査しているの。あんたなんか知らない?」
エ「宝に悪霊・・・ああ、そういうことになってたの。ごめんなさい。たぶんおそらくその都市伝説の原因私にある。」
陽「レナちゃんに原因があるって・・・何か知ってるの?」
エ「詳しく教えるから付いてきて。」
エレナは次の授業に必要な物を持った上で3人を連れて再び西側のロッカールームへ向かうことになった。
エ「ここが私の借りている133番のロッカー。中はこんな感じになってる。」
エレナはカードキーを使ってロッカーの中を開けた。中には・・・よく分からない機械やらなんやらが入っている。
和「なんなのよこれは・・・」
エ「私が作った発明の失敗作。何か別の事に使おうと思ってここに保管してる。」
咲「じゃあ、悪霊とか宝が眠っているとかいうのは・・・」
エ「たぶんおそらくだけど、たまに誤作動を起こして音が流れたり光ったりすることがある。悪霊だの宝だの言われているのはそのせい。」
エレナはリモコンのようなものを取り出して操作するとロッカーの中にある機械が光ったり音を出してわずかにではあるが動いたりし始めた。
和「この物音が悪霊の正体なわけ?」
エ「たぶんそう。期待してたのならごめんなさい。」
咲「だけどよかったよ。水晶学園に悪霊がいたら大問題になるところだったよ。」
エ「それじゃ私は授業に行くから・・・」
エレナはそういうとロッカーに再び鍵をかけ、ロッカールームから出ていった。
和「今回は空振りね・・・」
陽「だけど悪霊じゃなくて良かったねえ。」
咲「ほんとだよ。もし危ない霊だったら除霊する必要もあるかなって思ってたし・・・」
和「何もないならいいわ。さて、次の都市伝説を調べに行くか。」
咲「ことちゃん、授業受けなくていいの?」
和「今日あたしの受ける午後の授業全部休講なのよ。神宿、齋穏寺つき合わせちゃって悪かったわね。今度お礼するから。」
和琴はそういうとロッカールームから出ていった。
咲「私たちは授業に行こうか。受ける科目は別だけど。」
陽「そうだねえ。自分で選んだ授業に遅刻するなんて色々と」
咲彩と陽姫はそう言うとロッカールームから出て行ったのだった。しかし2人が出て行った直後133番のロッカー・・・ではなくすぐ横にある132番のロッカーからうめき声のような音が聞こえたのを知る者はいない・・・