季節が秋に入りかけたある日のこと。
麗「ねえ凛世。あたし昔っから憧れているものがあるのよ。」
凛「憧れてるものですか?」
麗「うん。ガールズトークってやつなんだけど。」
凛「何人もの女の子がお泊りに来て、好きな人とかの話をするあれですよね?」
麗「そうなのよ。あたし凛世たち女友達がたくさんそばにいる割にはそういうこと一度もやったことないなぁって思っててね・・・」
凛「それならやりましょうか。」
麗「え、やるの?」
凛「やりたいと思ったことはやった方が後悔しないんですよ。私はできる限りの範囲で愛麗と思い出を作りたいんです。」
麗「凛世・・・」
姫「なあ愛麗君。話は聞いたぞ。」
麗「苺瑠?どうしたのよ。」
姫「我もそのお泊り会に参加させてほしいのだ。我もあまり女子らしいことしたことないからさ、参加してみたいのだ。」
麗「もちろんいいわよ。じゃ苺瑠も参加ってことで・・・他にも参加者募ってみよ。」
その後、愛麗は彼女の仲のいいメンバーを中心に話し合いを行った。
話し合いの結果今週末の金曜日の夜にお泊り会をやることになった。
参加するメンバーは愛麗、凛世、奈摘、嘉月、和琴、エレナ、環輝、ラニーに苺瑠も加わって9人である。
場所は一番広い奈摘の家になった。
そして金曜日の午後3時。愛麗たちは天宮城家に集まっていた。
麗「相変わらず奈摘の家は大きいわね。」
姫「正月以来だけどいつ来ても大きいのだぁ。」
奈「お褒めの言葉、ありがとうございますわ。」
嘉「なんかウチ、ワクワクしてきたで。」
和「まず最初に全員でお風呂かしらね。」
奈「あ~天宮城家の大浴場は現在工事中ですわ・・・この前水が出なくなってしまいまして・・・」
和「そうなの。それなら仕方ないわね、銭湯でも行く?」
奈「心配には及びませんわ。第2浴場がありますもの・・・大浴場ほど広くはないですけど。わたくしの執事に言って今から準備させますわ・・・まずは部屋にお通ししますわね。」
奈摘は愛麗たちを10人入ってもまだ余裕があるほどの大広間のような部屋に案内する。
凛「ここって天宮城さんのお部屋なんですか?」
奈「いえ、違いますわ。わたくしの部屋はコレクションや画材でいっぱいですから。」
環「ここで全員で寝るんだし?」
奈「ええ、そこの奥にある扉が寝室ですわ。」
ア「準備いいデスね。」
エ「お菓子とかもあるの・・・?」
奈「あ、それは用意してませんでしたわ・・・一番大切な物を用意し忘れるなんて・・・」
麗「ああ、それなら心配しなくていいわ。お菓子ばかりは無理だけど、あたしが嘉月と一緒になんか作るから。お菓子ばかり食べるより、普通の食事も食べた方が健康にいいでしょ。」
嘉「せやな。腕によりをかけて美味しいもん作るで。」
奈「ありがとうございます。簡易厨房ですけどこっちですわ。食材も置いてありますわ。」
奈摘は2人を2部屋隣にある簡易厨房に案内する。
和「あたしたち残されちゃったわね。何かする?天宮城の奴遊び道具置いて行ってくれたけど。」
環「それなら、ここは定番のトランプでもやるし。」
エ「私得意・・・」
凛「分かりました。相手になりますね。」
残された7人はトランプを使ってポーカーを始めたのだった。
そして30分後・・・料理を作りに行っていた愛麗たちが戻ってきた。
姫「スリーカード出たのだ!」
環「苺瑠強いし・・・ババ抜きだと弱いのに。」
凛「私ストレートでたんですけど、この場合どっちの勝ちですかね?」
麗「ご飯できたから持ってきたわよ・・・なんだ、トランプで遊んでたのね。」
嘉「ウチらの自信作やで。」
奈「わたくしも少し手伝いましたわ。お風呂に入り終わったらこれ食べながらお喋りしましょう。」
持ってきた料理をテーブルの上に置く。皆が好きな物をそれぞれ作ったので和食や洋食、更には中華料理まであった。それに加え、デザート用に少しだがスイーツもある。
環「美味しそうじゃん。さっすが愛麗。」
凛「愛麗の手料理・・・」
麗「あたしだけの手料理じゃないからね凛世。」
凛「分かってますよそれくらいは。」
エ「パスタもある・・・」
和「もう何て言ったらいいのかしら・・・豪華ね。」
ア「ワタシの好きなシャシリクまで作ってくれるとは・・・さすがデス!」
嘉「ごめんラニーちゃんこれシャシリクやなくて、普通の串焼きや・・・」
ア「それでもいいデス!日本の串焼きも好きデスから。」
姫「チーズケーキもあるじゃないか。我の好みわかっててくれたんだな。」
麗「前に好きだって言ってたでしょ。」
その時奈摘の携帯電話に電話がかかってきた。
奈「はい、わたくしですわ・・・あ、そうですの。ありがとうございますわ。お疲れ様ですわ。」
奈摘はそういうと電話を切る。
環「なんかあったの?」
奈「いえ、お風呂の準備ができたとわたくしの執事から電話ですわ。」
エ「奈摘ちゃんってそうやってやり取りしてるの・・・」
奈「まあお屋敷は広いので・・・誰かを探すのにも一苦労ですから。それはさておき、お風呂行きましょうか。もちろん全員でですの。」
麗「全員で行って大丈夫なんだっけ・・・?」
奈「先ほど第1浴場が修復されたらしいのでそちらに案内しますわ。皆さんはぐれないようにわたくしについてきてくださいな。」
奈摘の案内によって天宮城家の奥にある第1大浴場に案内された。
1時間後・・・愛麗たちは風呂から戻ってきた。皆それぞれが持ってきた個性的で可愛らしいパジャマに着替えている。
奈「皆さんどうでしたか?天宮城家の第1浴場は?」
奈摘はピンクのネグリジェを着ている。髪も解いており、いつもより大人びた感じがする。
凛「大人数でお風呂入るの久しぶりでしたけど・・・たまにはいいですね。」
凛世は帽子とカチューシャの代わりにタオル地のヘアバンドを頭に着けている。パジャマはもこもこしたパーカーのようなものを着ている。
環「いやーここにいる全員が長髪だから髪乾かす方に時間かかっちゃったし。」
環輝は赤色をしたシンプルな前ボタン式のパジャマを着ている。
エ「私暇だった・・・髪の毛肩までしかないから・・・」
エレナは水色のワンピースタイプのパジャマを着ている。同色のナイトキャップもがぶっており、もちろん手袋は着用している。
ア「なんかごめんなさいデス。」
ラニーは灰色のスウェット系のパジャマを着ている。
和「鷲宮だけ先に部屋に帰ってればよかったのに。ドライヤーの熱気で暑かったでしょ?」
和琴はTシャツとジャージズボンをパジャマ代わりに着ている。三つ編みは解いてウェーブヘアになっている。
麗「そう言って1人だけで部屋に返すのも可哀そうでしょ。」
愛麗はピンクのTシャツと薄い青のオーバーオールをパジャマ代わりにしているようである。カチューシャは外していない。
嘉「せや、エレナちゃんは熱気に耐えながらウチらのこと待っててくれたんやから。」
嘉月はベージュのワンピースタイプのパジャマだが他の子と違いズボンも履いている。いつものリボンも後頭部にしっかりと着けている。
姫「それにしてもいい風呂だったな。」
苺瑠は私服とあまり変わらないパーカーワンピースをを着ていて、風呂上がりで髪を乾かすためかフードは被っていない。
麗「さ、部屋に戻ってきたことだし、さっきあたしと嘉月が作った料理を食べながらガールズトークを始めましょうか。」
麗「さて、早速だけど最初のトークを始めるわ。誰か最初の話題を出して。」
全「・・・・」
麗「話題出しなさいよ。」
環「そんなに言うなら愛麗が何か出せばいいじゃん。」
麗「あたし!?そうね・・・そもそも思いつかないからあんたたちに話題提供してほしいのよ。」
姫「急に思いつけと言われてもな・・・」
凛「悩んじゃいますよね。こういうの初めてですし。」
和「そうね・・・なら、血液型の話でもする?色々諸説あって面白いと思うわよ。」
麗「いいんじゃない。みんな何型なの?あたしAB型。」
凛「A型です。」
環「アンもA型。」
嘉「ウチはO型。」
エ「Rh-AB・・・」
奈「わたくしはB型ですわ。」
和「あたしはOね。」
ア「ワタシはABデス。」
姫「我はB型なのだ。」
麗「へえ・・・あたしたちって中々きれいに割れてるのね。」
嘉「意外にAB型多いんやな。」
奈「確か咲彩さんたちも加えると1組のクラスでは比率が1:1:1:1になるのですわよね。」
麗「それじゃまず・・・奈摘と苺瑠。B型で困ったってことあった?」
姫「我はB型でしょと一発で見抜かれることが多かったな。」
彩「なにか理由があるんですか?」
姫「ああ、なんか私の性格がB型っぽいんだそうだ。」
全「「「(なんとなくわかる・・・)」」」
姫「なんで黙るんだよ・・・我ってそんなにマイペースじゃないぞ。」
奈「わたくしは血液型の件もあって散々義母と義長姉に怒られたのであまり好きではないですわ。」
麗「奈摘は実家と喧嘩してたんだんだもんね・・・次に凛世と、A型特有のエピソードとかある?」
凛「私ですか?そうですね・・・私じゃないんですけど双子の姉の穏香ちゃんがシスAB型なんですよね。」
奈「確かABの遺伝子が両方に入ってるタイプのAB型ですわよね。」
凛「そうです。」
和「ってことは夜光とお姉さんって二卵性双生児なわけ?」
凛「はい。見た目が似ているので一卵性だとよく間違えられますけどね。」
麗「見た目そっくりだもんね。凛世と穏香さん。」
姫「凛世君も変わった血液型だったりするのか?」
凛「私は普通のA型ですよ?Rh-ですけど。」
エ「私と同じ・・・」
麗「凛世がRh-なのはあたしも初耳だったわ・・・たしかRh-って色々大変なのよね。」
凛「私個人のエピソードとしましては・・・A型なのが意外と言われたことがありますね。」
ア「意外?どうしてデスか?」
凛「私みたいな見た目の人って大半がAB型なんだそうです。」
和「なんか視野の狭い調査ね・・・黒髪ロングでA型の子なんていっぱいいるでしょうに。」
凛「そうですよね・・・見た目はその人ごとの好みですよね。」
環「ただアンから見ても愛麗と愛って血液型逆に見えなくもないし。凛世ってなんかABっぽいところあるじゃん。」
凛「どういうところがですか?」
環「愛麗のことが好きすぎて、ヤンデレっぽい所とか。それとあんた可憐に見えて力強いし。」
凛「私は愛麗が好きなのであってヤンデレではないです。あと力が強いのは関係ないでしょう。そういう花蜜さんはどんなエピソードあるんですか?」
環「アンのこと?・・・よく几帳面だねとか言われるけど、興味のないことはどうでもいいんだよね。」
麗「確かにあんたの部屋書類とか山積みで崩れそうだもんね。」
環「うっ・・・正論だから言い返せないし・・・」
エ「正直アンちゃんって最初B型だと思ってた・・・」
環「あ、そうなの。レナちゃんにまで言われるなら、一回血液型調べてもらおうかな。」
姫「アン君血液型調べてないのか?」
環「いや、昔調べたらA型だったし、母さんはA型だから間違いないと思う。あの親父は知らないけど。」
麗「血液型を把握するのは輸血の時とかに大切だからしっかり把握しておきなさいよね。次に嘉月と和琴、O型についてのエピソード何かある?」
嘉「別に困ったことはあらへんよ?ウチはO型だから、何言われても大して気にせえへんかったし。」
和「あたしは特に面白いこととかはないかな。O型自体沢山いるしね。」
ア「お二人とも話題がないって淡泊すぎるデス・・・」
麗「それじゃ最後はあたしたちAB型ね。まずあたしから行くわ。そうね・・・ABなのに胸が実ってるのが意外って言われたわね・・・」
凛「確かに愛麗のおっぱいって・・・」
環「でかいわよね。」
嘉「背は低いのになぁ。」
姫「正直うらやましいぞ・・・」
和「ACなのになんでそんなに大きく育ってるのよ?」
麗「知らないわよバカ!胸をジロジロみるな!」
愛麗は腕で胸を覆い隠す。
麗「ったく・・・レナちゃんとラニーは何かないの?」
ア「ワタシは別に・・・外国ではあまり血液型で性格診断ってやらないんデス。」
レ「私はある・・・Rh-のAB型なの・・・」
環「そういえばさっき凛世が同じような発言してた時反応してたわよね。」
エ「Rh-のAB型は2000人に1人の確率だから貴重・・・」
麗「いや、この世界ではAB型がそれなりにいるはず・・・」
凛「三次元の世界ではAB型自体が少ないみたいですね。」
環「現世とか三次元とか・・・なに都市伝説のこと真に受けてんだし。現世なんて人間という生き物にあこがれた奴が作りだした作り物に過ぎないっしょ。」
和「一応あたしたちの世界の基準ではA型30%、B型30%、O型20%、AB型20%になってるわよ?」
彩「ということは、AB型Rh-の確率は500人に1人ぐらいですね。」
ア「そう聞くとそこまで貴重でもないような気がしてきましたネ。」
エ「・・・・・・・・・」
麗「これ以上離すとレナちゃん機嫌悪くなりそうだから話題変えるわ。アン、何かないの?」
環「なんもないし。他の誰かは?」
全「・・・・・・・・・・・・・・・」
凛「私たちにはトーク能力がないのかもしれませんね。」
姫「本当に話続かないなぁ・・・我はちょっと眠くなってきたのだ・・・」
麗「そうかもね・・・それに今日は夜も遅いしもう寝ましょうか。」
奈「そうですわね・・・12時ですし、寝室はこちらですわ。」
奈摘は10人を寝室に案内する。そこには10人分のベッドが用意してあった。愛麗たちはそれぞれのベッドに入りここから深夜の大人なトークをするのかと思いきや・・・疲れていたのか全員眠りについてしまったようである。
そして次の朝・・・
麗「ふぁ~あ・・・みんな起きたんかな・・・」
凛「おはようございます愛麗・・・」
愛麗のベットの脇にはすでに着替えを済ませた凛世が立っていた。
麗「みんなまだ寝てんのかしら・・・」
凛「皆さんはもう起きてますよ?」
麗「あ、そうなの。」
愛麗は着替えをしながら返事をする。
麗「さて、朝食・・・作らなくてもよさそうね。」
凛「天宮城さん家の使用人さんが作ってくれたみたいですよ?」
愛麗と凛世が昨日トークをした広間には奈摘の家の使用人が用意した朝食が並べられていた。しかもテーブルには環輝以外のメンバーが全員すでに揃っていた。
ア「愛麗サン遅かったデスね。」
嘉「ウチらずっと待ってたんやで。」
麗「あーなんかごめん・・・あれ、環輝は?」
和「あいつはまだ寝てるみたいね。」
姫「愛麗さんちょっと声かけてきてくれますか?」
麗「んー分かった。凛世は先に席座って待ってて。」
凛「分かりました。」
愛麗は凛世を席に座らせると寝室の方に戻っていた。
愛麗は寝室に戻ってくるとまだ寝ている環輝に声をかける。
麗「アン、起きなさい。もう朝よ。」
環「まだ眠いし・・・あれやってくれれば起きるっしょ・・・」
麗「ったく・・・しょうがないわね・・・」
愛麗はオーバーオールを腰まで下ろすとベアトップの上から自分の胸の間に環輝の顔を挟み、少しゆする。
麗「ほらアン、おっぱいよ。これで起きなさいよ。」
環「ううーん・・・眼が覚めたわ!やっぱりあんたの胸は最高ね!」
麗「変態・・・」
愛麗は服を着直しながらそう言った。
環「たまにはいいじゃん。最近あんたと疎遠気味だったし。」
麗「そうだったの・・・ごめんなさい・・・」
環「ちなみに今のは寝たふりしてたんだし。あんたに胸挟みやってもらいたくてさ。」
麗「前言撤回よ!アンのバカ!」
環「柔らかくて気持ちよかったわよ。ホント、羨ましい限りだわそのむちむちスタイル。」
麗「あたしは太ってない!!!・・・まったく、朝食できてるから早く来なさいよ。みんな待ってるんだから。」
愛麗はそういうと寝室から出て行った。
環「(凛世ごめん・・・愛麗の胸って柔らかくて安心できるからやめられないのよ・・・)」
環輝はそう思いながら、愛麗の後を追って寝室から出たのだった。