南の島でのハプニング その5

咲彩たちと愛麗たちが合流した第1研究所では男たちの執拗な攻撃と愛麗たちの防衛線が続いていた。
しかし男たちの攻撃は思ったよりも強く、誰もが諦めかけたその時・・・
?「みんなまだあきらめちゃだめよ!」
咲「何あれ・・・光?」
麗「光が喋ってるわ・・・」
?「光・・・?まあ私死んでるし無理もないのか・・・」
凛「あなたは誰なのですか・・・?」
?「私?私は伍代可愛。信じられないかもしれないけど市長が憎くて成仏なんかできなくてね・・・
この島の周辺を何年も漂ってたの。生きてた頃は第1研究所で24歳ながら所長をしていた者よ。」
咲「伍代って・・・日記に書いてあった所長さんよね?」
姫「なんでさっきの時点で出てきてくれなかったのだぁ・・・」
伍「こうやって実態を表すのは疲れるのよ・・・霊にも色々あってね・・・
そんなことより、早く地下にある潜水艦を動かして脱出しなさい!さもないと、全員生贄行きよ!」
麗「そんなこと言ったって潜水艦動かないみたいだし・・・」
伍「動かない?そんなはずな・・・あ、そうかあれが必要なのか・・・」
凛「あれってなんですか?」
伍「潜水艦の動力装置。いわば鍵みたいなものね。宝石が5つ必要なのよ・・・そのうち4つは・・・あったわ。」
伍代は光の中からエメラルド、ルビー、サファイア、ブラックダイヤモンドを取り出した。
柚「あと1個は?」
伍「それが・・・私の上司があと1つは管理していて、その石は水晶なんだけど上司も殺されちゃったから今はどこにあるのか分からないの。
だけどその4つだけでも80%ぐらいの動力は保てるはず・・・それよりも!」
伍代はそう言うと入口の扉の方へ向かう。
伍「私が島民を引き付けるから、その間に早く脱出しなさい!それと、市長の悪事が詰まった資料もしっかり持っていくこと!」
伍代はそういうと割れた窓から飛び出し、研究所の扉を破ろうとしている島民に向かって強い光を放つ。
男1「ウアアアアア!!!マブシイ・・・」
男2「ナンダ!オマエフザケルナヨ!!!」
伍「ふん、市長とさんざん悪事を働いておいてその執念で理性を失った獣のような存在に成り下がってるくせに
まだ貪欲に人を食べて生きようとするなんてあんたたちって本当に醜い下等生物よね!」
男1「ナンダト!」
男2「オマエカラクッテヤル!!!」
伍「ほーら!こっちよこっち!」
伍代は扉を攻撃していた男2人を自らの光で引きつけ、研究所から遠ざかって行った。
凛「何とか助かりましたね・・・」
柚「それじゃ早速、この4つの宝石の力で潜水艦を動かしてみよう。」

そのころ地下では海に浸かった部分に浮かんでいる潜水艦の中で環輝が必死にシステムの解読をしていた。
環「もうこれ複雑すぎて分かんない・・・」
咲「あまちゃん!」
そこに先ほどまで1階にいた咲彩たちがかけつけた。
環「どうしたのよ。動かし方でもわかったの?」
麗「これはめられそうな穴はない?」
愛麗は環輝に先ほど渡された4つの宝石を見せた。
環「宝石をはめられる穴なんて・・・あ、ここかも。ちょっと宝石貸して。」
環輝は4つの宝石をその穴にはめ込む。すると潜水艦のシステムが起動し始めた。
環「やったわ!だけど・・・」
麗「だけどどうしたのよ?」
環「動力80%だって。これだと、騎ノ風に戻るまでに沈没する危険性があるみたいよ。
それに・・・私たちの中に潜水艦の運転できるのっていないんじゃ・・・」
柚「そういえばそうよね・・・」
奈「ここまで来たのに手詰まりですの・・・?」
柚「あ、エレナちゃんならできるんじゃないかな?」
姫「いくらメカに精通しているとはいえエレナ君も未成年だしさすがには難しいんじゃないのか・・・」
水「そもそもこの潜水艦に15人乗って帰れるのか?」
環「システムによるとこれ30人まで乗れるみたいだからそこは問題ないわ。」
麗「それにしてもレンやエレナちゃんは島のどこにいるんだろ・・・」
柚「そういえばボクたち10人以外からはなんの音沙汰もないよね・・・」
環「それならつないでみるわ・・・」
環輝は先ほど作った小型の通信機を潜水艦の中に持ってくると、何かをやり始めた。
咲「何が始まったのあまちゃん。」
環「この通信機で今行方不明の5人のうちの誰かが持っている携帯にアクセスを試みているの。
この島は電波がかなり弱いからつながるかどうかは分からないけど・・・」
柚「あんたの得意なハッキングね。」
環「いや、通信するだけだからハッキングとはわけが違うのよ。じゃ、行くわよ。お願い繋がって・・・」
環輝は嘉月たちの内の誰かにつながることを信じながら通信機のボタンを押した。

その頃嘉月たちは正子の言葉通り、南の集落から北の研究所へ向かって足を進めていた。
しかしその途中で島民に3度ほど見つかり、攻撃されていた。その度に振りきったり、鮫川先生が退治したりしていた。
そもそも嘉月たちのグループでまともな戦闘ができるのは鮫川先生とラニーぐらいであり、嘉月やエレナは戦闘が苦手である。
しかも島民には3回も見つかっており、全体的な体力の消耗はかなり激しい。
嘉「北の研究所にはまだつかへんのかな・・・」
ア「ワタシたちが落っこちたのは南側デスから・・・まだまだかかるんじゃないですかネ・・・」
鮫「だが確実に近づいているのは確かだ。さっきまで平原だったのが今は森の中だ。ここまでくれば身を隠すことができるだろう。」
嘉「せやな・・・それならもうひとがんば・・・」
嘉月がそこまで言いかけた時、彼女の持つ電話が鳴りだした。
嘉「あれ電話・・・?この島電波弱いんや無かったっけ・・・番号はしらん番号やな。」
嘉月は不審に思いながらも電話の通話ボタンを押す。
嘉「はい、雷久保です。」
環「あ、嘉月!?今どこにいるの!?」
嘉「その声は・・・環輝ちゃん無事やったんやな!」
環「無事よ。貴方たち以外のメンバーも全員一緒にいるわ。そっちは?」
嘉「こっちはウチとエレナちゃんとラニーちゃんと陽姫ちゃん、それに鮫川先生もおるで。」
環「よし!これで全員そろったわ!それでどの辺にいるの?」
嘉「森の中やけど・・・少し言った所にうっすらとコンクリートの建物が見えるんやけど・・・」
環「そうなの!ならその建物の所まですぐに来てそこが研究所だから!」
嘉「ほんまなん!ならすぐ向かうわ!」
嘉月はそう言うと通話を切った。
嘉「あそこに見える建物がほかの皆がいる研究所なんやって!」
鮫「そうか、あれが正子さんの言っていた個性第1研究所か・・・」
ア「それなら早い所向かうデス!」
嘉月たちは他のメンバーに合流するため早足で研究所に向かう。
しかし、その後ろに招かれざる客を連れていたことには誰も気づかなかった・・・

研究所の通信機前では通話を終えた環輝が結果を報告した。
環「嘉月たちこっちに向かってるって!」
水「そうか・・ならアタシたちは急いで必要な物を積んで潜水艦に乗り込むんだ。」
麗「なんで?レンたちが合流してからでもいいんじゃ・・・」
水「万が一ここが見つかって追尾していた島民に襲われたらどうするんだ?そうなったら終わりだろう。」
凛「確かに・・・いつでも発進ができるようにした方がいいですよね。」
水「そういうことだな。」
咲「だけどれんちゃんたちはどうするの?地下に潜水艦があることは伝えてないんでしょ?」
柚「それならボクが地上に行って嘉月ちゃんたちをここまで誘導するよ。」
姫「一人で大丈夫なのか?柚歌君スピードは合っても万が一の時のパワーは・・・」
柚「そうだね・・・なら苺瑠ちゃん手伝ってくれない?」
姫「我がか?だが・・・我は柚歌君とは逆にパワーはあるが早くは動けないのだ。」
柚「心配いらないよ。苺瑠ちゃんは柱を持ち上げて島民を通せん坊したりすればいいんだよ。」
姫「その手があったな・・・なら早速迎えに行こう。」
柚歌と苺瑠はそう言うと1階にある研究所の入り口に向かった。
咲「れんちゃんたちの案内は2人に任せて私たちは早く潜水艦に乗り込もう。」
水「そうだな。他のみんなも早く乗り込むんだ。」

一方嘉月たち5人は遂に研究所の入口近くまで到達した。
嘉「あ、研究所の入り口が見えたで。」
エ「着いた・・・だけどとても疲れた・・・」
柚「あ、嘉月ちゃんたち!無事でよかったよ!」
姫「ここまでお疲れ様なのだ。」
鮫「柚歌に苺瑠。他の奴らは?」
姫「もうすでに地下にある潜水艦に乗り込んでいるよ。さ早く・・・」
苺瑠はそこまで言いかけて、急に黙り込んだ。
柚「どうしたの苺瑠ちゃん?」
姫「うぎゃあああああ!!!島民なのだあああああ!!!」
男「ウガアアアアア!イケニエ・・・ニガサンゾ!」
嘉「いつの間に・・・」
鮫「みんな先に急げ、ここは私が食い止める!」
姫「そいつらはまともに戦って勝てる相手じゃないのだ!くそう・・・あの手段を使ってやるのだ!
この柱を・・・それえええええええええ!!!」
苺瑠はそう言うと近くにある一番太い鉄の柱を掴み、渾身の力で引き抜いた。
そう、この柱は研究所の大黒柱(鉄筋ではあるが)である。苺瑠は引き抜いたその柱を・・・
姫「うらああああ!!!」
島民に向かって投げつける。いくら力の強い島民とはいえ、こんな大きい柱を投げつけられれば耐えられない。
男「ウガ・・・アア・・・」
島民はその場に倒れた。打ち所が悪ければ死んでしまっただろう。
それと同時に大黒柱を引き抜いたことで、研究所が地響きを立てて崩れ始めた。
柚「まずいもう時間がないよ・・・はやくこっちへ!」
嘉月たちは柚歌と苺瑠の案内でまだ崩れていない地下室へ向かう。

地下室ではすでに潜水艦に乗り込んだ他メンバーたちが崩れる研究所に対して不安を持ち始めていた。
水「なんだか知らないが研究所が崩れ始めたぞ・・・」
麗「そんな・・・柚歌と苺瑠は・・・」
柚「戻ったよ~!」
姫「早く中に入れてほしいのだ!」
嘉「ウチらもおるで!」
陽「なんだか走ってばかりで疲れたよぉ・・・」
咲「れんちゃんにはるちゃん、無事だったんだねよかったよ・・・」
麗「再会を喜ぶのはわかるけど今は早く乗り込んで!」
柚「そうだった・・・早く乗って!」
柚歌と苺瑠と嘉月たちは潜水艦に乗り込んだ。
柚「それとこの潜水艦の運転なんだけど、鷲宮、あんたできない?」
エ「ちょっと見せてもらわないと・・・」
エレナは運転席に座ると、ハンドルなどの運転設備を一通り見て少し動かす。
エ「だいぶ旧式の潜水艦みたいだけど、このタイプならできる・・・」
柚「そう・・・それなら運転お願い!」
エ「分かった・・・これからいったん潜水して、島の外に行ったところで体勢を立て直す・・・」
エレナは巧みな操縦で潜水艦を潜水させ、研究所を脱出した。
エ「しばらく揺れるから、席から立たないように・・・」
鮫「すごいな・・・15歳なのに潜水艦を巧みに操っている・・・」
エ「昔おじい様にこっそり運転させてもらってたので・・・」
エレナは巧みな運転技術で潜水艦に海の中を駆け抜けさせていく。
そして研究所からだいぶ離れたところで、潜水艦を再び水上へ浮上させた。
エ「ちょっと疲れた・・・」
嘉「エレナちゃんの運転すごかったで!」
エ「それほどでもない・・・ん・・・?」
咲「どうかしたのエレナちゃん?」
エ「動力80%しかない・・・これだと本州まで運転するのは厳しいかも・・・」
水「そこか・・・この潜水艦の動力を100%にするのは宝石が5つ必要みたいで、アタシたちが手に入ったのは4つだけだったんだ。」
鮫「なあ、最後の一つにこれが使えないか?」
鮫川先生はそういうと先ほど正子に託された水晶を渡した。
麗「そういえば、最後の一つは水晶だったって伍代所長の霊が言ってたけど・・・」
エ「試してみる・・・」
エレナは水晶を受け取ると、最後に残った穴に水晶をはめ込んだ。すると・・・
エ「動力が上昇していく・・・100%になった!」
凛「これで騎ノ風に帰れるんですね。」
水「一日だけだったけど、長かったなぁ・・・」
麗「いや、まだ終わってないわよ。この伍代所長が調べ上げたあの島の真実を公表して市長を問い詰めないと・・・」
咲「そうだね・・・だけどまずは帰ろう。私たちの街へ!」
愛麗たちは動力が最高になった潜水艦で彼女たちの生まれた町騎ノ風へ戻っていく。
そして愛麗たちをだました市長との戦いが始まる・・・