あたしは恋愛小説が好きだ。しかも女の子同士で付き合ってHなことまでする濃厚な奴が。
あまりにも好きすぎて友達に進めることもあったのだがある時友達の1人である生泉愛麗に紹介するのもいいけど書いてみるものどうかと勧められた。
そんなわけで一度文章を書いてみることにした。いずれ心理学者になったら本も出そうと思っていたし、いい練習機会だ。
そう思ったあたしは早速執筆を始めた。序盤はすらすらと書けていたのだが途中で完全に詰まってしまった。
和「ああもう!この先の展開どうしたら面白くなるんだろ・・・」
麗「あれ、ずいぶん悩んでるじゃない。」
和「生泉・・・」
麗「和琴ならすんなり描くと思ってたけどそうでもないのね。」
和「あんたに言われたくないわよ・・・そうだ。ちょっと付き合いなさい。」
麗「何に付き合うのよ?」
和「こっち来て。」
あたしはそういうと生泉を地下書庫の仮眠スペースに連れてきた。
麗「ここに連れてきたってことは・・・まさか・・・」
和「そ、そのまさかよ!」
あたしは生泉をベッドに押し倒す。生泉の身体があおむけに倒れる。
麗「何する気よ・・・」
和「小説をすんなり書くために協力してもらうからね。」
生泉はあたしと比べるとかなり小柄で力もそんなにないので、あたしが少し力を入れれば簡単に押さえつけられる。
和「相手を最も感じさせるようにするには3つの感覚を刺激すればいいんだっけ・・・忘れちゃったけど思い出しつつやってみるか。」
麗「やめ・・・」
和「まずは・・・耳か。聴覚を攻めることで相手を感じさせるって話を聞いたことが・・・」
あたしは生泉の耳元に行き、耳を攻めることにした。耳を舐め、耳穴の中に舌を入れ、耳たぶを噛む。
麗「ひあっ・・・やっ・・・」
和「ふふ・・・可愛いわね。次は臭いをかがせて興奮させる、か。どうすれば・・・そうだ!」
あたしはいつも結んでいる三つ編みのリボンに手をかけるとそれを解き、大げさに髪を整える。
麗「何を・・・」
和「こうするの・・・よっ!」
あたしは頭を反らし、解けた髪を生泉の顔・・・特に鼻に覆いかぶさるよう振りかぶった。
麗「(いい香り・・・)」
和「どう?嗅いだことないから知らないだろうと思ったけど、結構いい香りするでしょ。
最後は・・・視覚、か・・・胸見せればいいわよね。」
あたしは上半身に来ているタンクトップを脱ぎ、お気に入りの緑の下着を見せつける。
和「どう?」
麗「緑色なのが和琴らしいね・・・ってかそろそろ降りてよ。」
和「ダメよ。ここからが本番なんだから。じゃ、興奮もしたところで脱がすわね。」
あたしは生泉の服に手をかける。こういう時生泉が来ているオーバーオールのような服は脱がしにくい。
肩紐を外そうとすると、生泉は急に暴れだす。
麗「やだ・・・やめて怖い・・・」
和「・・・夜光じゃないとだめなの?あたしのこと嫌い?」
麗「だって和琴に恋愛感情感じたことないし・・・」
和「そんなの関係ないでしょ!」
あたしは強引に生泉の口を奪う。舌も入れながら。
麗「(やだやだ凛世助けて・・・)」
生泉は苦しそうな表情をしていた。深い緑の目からは光が消えていた。
和「ぷは・・・なんでよ・・・なんでそんな表情するのよ!」
あたしを受け入れない生泉に対して怒りを感じた。無理やり肩紐を外して生泉のベアトップの上から胸の突起に噛みつく。
麗「痛っ・・・!」
和「なんで受けれてくれないのよ・・・なんでよ!」
もう片方の突起を強くつねる。
麗「痛いってば!なんでこんなことするのよ!!!」
和「あんたが・・・あんたが全部悪いのよ!」
あたしの手は一旦突起から離れ、首に伸びる。両腕であたしを受け入れようとしない生泉の首を絞めつける。
麗「苦し・・・やめなさ・・・」
・・・と、ここまでは上手くできたんだけどこの先が上手く書けない。自分の作品は人に見てもらうのが一番いいというから提案してくれた生泉に見てもらうことにした。
和「どうかしら?あたしの渾身の力作なんだけど・・・」
麗「あんたさ・・・なんであたしを勝手に題材に使ってるわけ?しかも殺す気満々じゃない。」
和「そういうつもりはないんだけどな。あたしの中では首絞めは相手を脅すための表現の一つだし。それに生泉ってこういう作品の題材に使いやすいのよね。」
麗「どういう所が?」
和「小柄で胸大きい所とか、少し煽るだけで怒りだすところとか。」
麗「ああそう・・・それより書く前に許可ぐらいとれよ。それにしてもこれ、凛世が見たらあんたの首絞めそうで怖い。」
和「夜光かぁ。確かにこんなの見せたら殺されるかも。私の愛麗になんてことをとか言われて・・・」
凛「お二人とも何をしているのですか?」
麗「あ、凛世・・・」
和「いや別に何も・・・」
凛「その原稿は愛麗が書いた新作ですか!?見せてください!」
麗「あー・・・見つかっちゃった。だけどこれあたしの作品じゃないわよ。」
和「それあたしが書いたの。生泉に勧められて、自分で創作やるのも面白いとか言ってきたからさ。」
凛「眞武さんが書いたのですか・・・ちょっと拝見しますね。」
夜光はあたしの手から原稿を取り上げて見始める。
和「(殺される・・・夜光に殺される・・・)」
凛「眞武さん・・・」
和「は、はい!」
凛「素敵じゃないですか。なんだか昼ドラのようにも感じる良い発想だと思います。
純愛じゃない恋愛小説って大体こんな感じなんですよね。」
和「そう、ありがとう・・・」
凛「ただ、愛麗との間にこの文章のような関係はないんですよね?」
和「な、ないわよ・・・生泉はあんたと付き合うのが一番幸せなんでしょ!?」
凛「愛麗の気持ちは分からないですが、私はそうですね。この小説、愛麗とのキスの所に助けて凛世としっかり書いていたところがすごくいいです。
ピンチの時に大好きな人に助けを求める所・・・いいですねぇ。」
麗「凛世、妄想世界にトリップしてないで戻ってきて・・・」
和「夜光、あんた国語得意だったわよね。この続きになんかいい案ない?」
凛「そうですね・・・いっそのこともっと重くして見たらいいんじゃないですか?」
和「これをさらに重くするの?」
凛「はい。病むほど愛麗を愛してしまう眞武さんですが私がいるからその思いは永遠に届かない・・・
ここまで読んで私が持った作品の雰囲気はそんな感じなので、ここをもう少し重くすることでよい愛憎劇になるのではないでしょうか?」
麗「愛憎劇なんて言葉どこで覚えてきたのよ・・・」
和「うーん、あんた達の意見だけだと判断し難いから他のやつにも聞いてみるわ。」
凛「そうですか。いい意見がもらえるといいですね。」
あたしは他の友人の意見も聞いてみることにした。
和「生泉と夜光以外で国語の成績がいいやつは・・・そうだ、神宿ならいい評価くれるかもしれない。」
思い立ったあたしは早速神宿を探す。
和「いた!神宿~!」
咲「あ、ことちゃん。そんなに慌ててどうしたの。」
和「ちょっとこれ読んでほしいんだけど・・・」
咲「わかったよ・・・ええと、これはどんなお話なの?」
和「叶わない恋を求めて好きすぎる相手を追い詰めてしまうとんでもない愛憎劇。」
咲「私そういうの苦手・・・だけど読んでみるよ。」
神宿は5分ほどかけてあたしの書いた小説に目を通した。
咲「・・・一通り読み終わったよ。」
和「どうだった?」
咲「私からすればもうちょっと明るめにした方がいいんじゃないかな?このまま続きを書いたら
ことちゃんがらっちゃんを絞め殺したっていうサスペンスみたいなお話にしかならないような気がするよ・・・」
和「夜光にはもっと重くするといいって言われたからその答えは意外だったわ。」
咲「私は重いのは嫌かなぁ・・・」
和「貴重な意見ありがとう神宿。他の奴の意見ももらってみるわ。」
あたしは次にその辺を歩いていたクラスメイトのロシア人ラニー・フェダークを見つけた。隣には友人の塩車櫻琉もいる。
和「フェダークに塩車じゃない。ちょっといい?」
ア「あ、和琴サン。何が御用デスか?」
櫻「こんな時間に珍しいね。」
和「ちょっとこれを読んで感想をもらいたいんだけどいいかしら?」
ア「分かったデス。」
フェダークはあたしから原稿を受け取ると真面目に読み始めた。しかし、読んでいくにつれて様子がおかしくなっていった。
ア「ア・・・アウ・・・アアアアア!!!」
和「ちょ、フェダーク大丈夫?」
一通り小説を読み終えたフェダークは顔を真っ赤にしてその場に倒れこんでしまった。
後で聞いた話によるとフェダークはこういった小説を全く読んだ経験がないらしく、
生まれて初めて見たハードな描写に耐えきれず感情を暴走させてしまったらしい。
櫻「ラニーちゃんしっかりして!」
ア「ワタシニハ・・・まだ早かったみたいデス・・・」
和「フェダークには刺激が強すぎたのかしら・・・」
櫻「ラニーちゃんを気絶させるなんてどんだけ過激な作品なのそれ・・・自分にも読ませてくれない?」
和「別にいいけど・・・」
塩車はあたしから原稿を受け取ると読み始めた。そして難なく読み終えこういった。
櫻「これは官能小説でも目指しているの?それともただのエッチな小説?」
和「一応軽い官能小説のつもりなんだけど・・・」
櫻「そうなんだ。ならこの後は主人公の和琴ちゃんが無理やりヒロインである愛麗ちゃんの貞操を奪うってことでいいんだね?
自分としては官能小説としてなら物足りないって思っちゃったな。ここから先どんな展開が待っているのか楽しみでもあるけどね。」
和「そう、適切な評価をありがとう。というかあんたはなんでそんな官能とかいう言葉知ってるのよ?」
櫻「別に全然。自分、官能小説の文書校正のアルバイトしてたことあるから。」
和「未成年でそんなバイトやってたのあんた・・・」
櫻「将之介さんの知り合いの作家さんたちに頼まれてさ。」
和「そういえばあんたの義父って絵本作家だったわよね・・・」
櫻「そういう経験もあるし・・・和琴ちゃんのエロい小説、自分が校正してあげるよ。こういうタイプの作品だと愛麗ちゃんたちにも見せづらいでしょ?」
和「そうね。もしがあんたがいいんなら・・・また見てもらえる?」
櫻「もちろんだよ。」
和「それなら、またよろしくね。」
櫻「それじゃ自分は念のためラニーちゃんを医務室に連れて行くから。それじゃまた。」
塩車は顔から未だに赤みの抜けないラニーを担いで医務室のほうに歩いて行った。
その後学校を終えたあたしは自室で自分の書いた小説を読み直していた。
和「やっぱり色々な奴に聞くことであたし自身が気づかなかった視点の意見ももらえたし、
読んだ相手の気持ちとか、全然気づかなかったことも見えたわ。やっぱり誰かに作品を見てもらうのって大事よね。」
よし、この小説の続き今なら書けそうな気がする。ちょうどいい感じに考えがまとまったような気がするしね。」
あたしはまとまった考えを書きかけの小説の続きから書き始めたのだった・・・